sora tob sakanaと私②楽曲:インディー期編

前回の流れのまま時系列で語るのはあまりにもダラダラしそうなので、ここからはお題を決めて語っていきたい。まずは楽曲について。

『音楽プロデュースを照井順政(ハイスイノナサ、siraph etc)が手掛けており、ポストロック、エレクトロニカといったジャンルのサウンドを基調にした物語性の強い楽曲とイノセントな歌声、表情豊かなパフォーマンスが唯一無二の世界観を作り出している』


sora tob sakanaの楽曲を説明する時に、定型句として出てくるフレーズである。司会者がいるイベントや、メディアに出たときはだいたいこれがそのまま使われることが多い。私もポストロック、エレクトロニカが元々好きだったからサカナの音楽に興味を持ったわけだし、間違えでは全くない。

しかし、個人的にサカナの音楽に惹かれ続けた最大の理由は照井さんが

sora tob sakanaをジャンルアイドルにしなかったこと』

だと思っている。アイドルグループを展開していく上で不可欠な『コンセプト』と『音楽性』を比較的ファジーにしたことで、自由でバラエティに富んだ楽曲展開ができたように感じるのだ。

 

サカナの楽曲を語る上で『ポスト~マスロック⇔オルタナ』と『アンビエントエレクトロニカ』の2軸が基本になる気がするけど、この座標軸でも完全に被る曲はほとんどないうえに、これに合致しない楽曲もたくさんあると、振りかえってみて改めて思った。実に自由!

というわけで、今回は全作品の全曲レビューを通して何故私がサカナの楽曲が好きなのかを語っていきたい。
※あくまで個人の感想・音楽趣味・知識に基づいたものなので、照井さん本人の意図・見解とは大幅にずれていることをご了承ください

■夜空を全部(2015.10.10)

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若い・・!

①夜空を全部
言わずと知れたデビューシングルの表題曲にして代表曲。照井さんが解散直前の時点でも最高傑作と断言するだけあって今聴いても、不要なパート・フレーズが一切存在しない唯一無二感。これ以降2度再レコーディングされているが、この原型をひたすらブラッシュアップさせる形となっている。個人的な感想だが、元のオケが印象的すぎて現在のバンドセット編成になるまでバンドセットバージョンが正直しっくり来なかった。歌詞全体に溢れんばかりのジュブナイル感、「私の夜空を全部あなたにあげる」というフレーズがまず天才だし、そこから「夜空を全部」というタイトルとして抜き出すセンスも異常。
②Moon Swimming Weekender
ライブでこれのイントロが流れた瞬間にフロアが沸き立つ感じがとても好き。初めて聴いた時はUnderworidのマスロック的解釈という印象だった。後に1stアルバムに収録されたバージョンと比べると完全打ち込みなためかリズムが変態的(1stアルバムでは生演奏を意識してかリズムが若干優しくなるw)。これを普通だと思ってパフォーマンスしていたメンバーは凄い
クラウチングスタート
思春期の甘酸っぱい初恋と別れを描いた(照井さんはユーミンを意識したそう)サカナ屈指の胸キュンソング。ラフで初期衝動感があって初期The Get Up Kids的でエモい。こちらも2度再レコーディングされたが、作りの粗いこのバージョンが一番グッとくるのはやはりエモさとメンバーの等身大と重なっている故だろうか?ラスト「今新しい靴を履いて~」のニゾンの美しさは4人のサカナの真骨頂(ここはライブ編でも語っていきたい)。

■魔法の言葉(2016.02.16)

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この衣装は個人的に一番好き

①魔法の言葉
2ndシングルの表題曲。フォーク~トイトロニカ的ともいえるカラフルな電子音が印象的なエレクトロナンバー。初めて聴いた時は「照井さんはこんな引出しもあるのか!」と驚いた。メンバーのソロパートのみで構成されているのも特徴で、これ以降エレクトロニカやポップな色合いが強い楽曲で採用されるようになる。2番ふぅちゃんパートの「これからの~」の歌声は至高。初期のセトリではアクセント的役割になっていた印象、特にTFMホールでよく聴いた気がする。この曲の次にシングルが出るのが2年以上後とはメンバーもオタクも誰も思っていなかったはず。
②新しい朝
サカナとしては異色のサイケ風味?のデジロック。寝坊してしまった後悔をやたら壮大な歌にしてしまう照井さんのイマジネーション。落ちサビはまなちゃんの歌声の魅力の塊。ドタバタ感のあるコミカルな振り付けで、振りコピも楽しい。サカナでは珍しいウリャオイ曲。
③広告の街
照井さんがハイスイノナサに寄せてアイドルソングを作ったらこうなった。対外的なサカナの代表曲になったこの曲も、この時点ではシングルカップリング。サカナがメディアでは『ポストロック~マスロックをやるアイドル』とイメージの付いた最大の要因はこの曲(と照井さん自身による演奏動画)だと思われる。歌詞を一音ずつ分解してメンバーに割り振るという発想と、それに何の疑問も感じずに付いていったメンバーの凄さ。この時点ではドラムはまだ打ち込みだが、GOTOさんのハイパーソリッドなドラム(1stアルバム)→リンタロウさんの重厚なドラム(deep blue)とリズムがよりグルーヴィーにダンサブルに変遷していくのも面白い。

sora tob sakana(2016.07.23)

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2010年代ベストであろう鮮烈なジャケット

①海に纏わる言葉
ライブのオープニングSEに使われていた楽曲。波音から始まり、アンビエントな音色、ピアノの単音からバンドサウンドに雪崩れ込む。この曲のおかげでサカナはどんな対バンに出ようと瞬時に場の空気を切り替えることができた。
夏の扉
サカナで最もエモい(ジャンル的な意味で)楽曲と言えばこれ。MineralのGloriaばりに胸を焦がすイントロは最強。ひと夏の恋物語を想起させる歌詞とサウンドの相乗効果。れいちゃん(後にふうちゃん)による「目線を逸らして~」の一節は毎回ウルっとなる。そんな経験したことないのに。
③広告の街
④夜空を全部
⑤魔法の言葉
⑥まぶしい
壮大なストリングスとキラキラしたギターフレーズ、それに相対する暴れ馬のようなリズム隊。きっと照井さんアダム・ピアース(Dylan Gloup,Mice parade)好きなはず。夜空を全部の続編のような世界観の歌詞も相まって、ライブで披露される頻度は少ないながら隠れ人気曲だった印象。終盤の展開はまるで聖歌のよう。
⑦My notes
サカナでは比較的スタンダードな和製オルタナロックチューン。サカナ現場では珍しいイエッタイガーがはまる曲。1stアルバムが出るまではライブ定番、でもそれ以降は出現頻度が徐々に減っていった印象。解散直前に思わぬ形(『My Notesさんに失礼事件』)で脚光を浴びることになりw、結果的にセトリに復活する。
⑧Summer Plan
サカナの夏は毎年素敵な軌跡が起きる(これもライブの思い出で語りたい)、そんなことを予見したかのようなトロピカルマスチューン。トリッキーなリズムなのに、驚くほどキャッチ-でフロアも巻き込んで盛り上がりラインダンスまでできる屈指の沸き曲だった。サカナの振り付けのユニークさを象徴する1曲でもあると思う。個人的には2番Bメロのふぅちゃんパートが好きすぎて、毎回全力でコールしていた。
⑨帰り道のワンダー
初めて聴いた時の感想は「みんなのうたかよ?!」と思ったカントリー風味のフォークロックチューン。トクマルシューゴ的なリフが入っていたり、しっかり照井さんぽい要素も。メンバーがフロアに掛け声を煽る数少ない楽曲だった。今聴くと音源の終盤で大はしゃぎする4人の声、そしてなっちゃんの「やばめ・・・w」が泣ける。
⑩おやすみ
何気ない日常に遠く離れた友を思う、チルなサウンドに都会的なセンスを感じるギターと少しブルージーなスライドギターが乗っかるミドルチューン。曲全体に流れるクリックノイズは心のざわつきか。個人的にはさよならポニーテール感があって好き。まなちゃんのお気に入り曲で、自身のプロデュース公演で5連続?でやったのは有名な話(私は見逃した)。
⑪Moon Swimming Weekender
⑫新しい朝
ケサランパサラン
なっちゃんが照井さんに熱望して作成されたサカナ史上最も可愛いチップチューン。落ちサビ含めて実質寺口曲。セトリの流れに置きづらいためか?ライブ出現度はかなり低めのSレア曲だった。ラップ風パートのふぅちゃんの「Hoi!」とラストの「悔いはないです」がとてもとても可愛いのだけど、ライブで悔いはなかったのは記憶する限り一度しかない
クラウチングスタート

cocoon ep(2018.04.11)

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初のイラストジャケ(これ以降メンバーのジャケット登場が激減)


ribbon
サカナにとって大事なステージでは高頻度でこの曲が最初か最後を飾っていた。特に終盤、クライマックスのぶち上げ曲(夜間飛行など)が終わった余韻にこのポストクラシカルなイントロが流れて来た時の頼もしさ、ダメ押し感は半端なかった。cocoon(=繭) ep自体が『幼年期との決別』『大人になること』をテーマにした作品だと思うのだけど、ribbonはそのオープニングにしてテーマソングのような存在になっている。バンドサウンドのサカナ曲でベストを挙げるなら私は確実にこれを選ぶ。終盤、「発車のベルが~」のふぅちゃんはマイベストふぅちゃんの1つ。
②タイムマシンにさよなら
サウンドにフューチャーベースを取り入れた意欲作。とは言え、ビートがどんどん暴れ馬になっていくのが照井さんらしい。振りコピしやすく、ジャンプしてシンガロングして盛り上がるパートもあり、ライブ序盤の着火剤(2曲目に置かれることが多かった印象)としてで重宝されていた。
③夢の盗賊
cinema staffのメンバーがドラムで参加しているロキノンオルタナサウンド×変拍子というヘヴィな楽曲。歪んだギターがここまで前面に出た曲は意外と珍しかったり。マスアピールもできる楽曲だと思うのだけど、セトリ出現頻度は低め。間奏のクラップが気持ちいい。
④tokyo sinewave
サカナ×IDMの原点にして至高の1曲。曲が経過するごとに徐々に音数が増えていき、クライマックスで音の塊と化した瞬間、波が引くように音数が減っていく流れが素晴らしいの一言。2017年のTIFのZEPP、2019年の@JAMの横浜アリーナなど大舞台でジョーカー的に使われることも多かった。特に後者は鳥肌物だった。一度ガチのテクノイベントに出演して欲しかったなあ。本当のことを言うと歌割は最初期(まなちゃんが歌い出しを担当、音域が合わずにれいちゃんになった)が好きです。あの消え入りそうな儚さこそまなちゃんの歌声の魅力。
⑤透明な怪物
曲調は完全に合唱曲なのに途中でバーストするとんでも展開な楽曲。歌詞の内容がribbonと同じく『幼年期との決別』になっており、cocoon epの終章的なポジションとなっている(個人的に夜間飛行はエンドロール)。ライブでは途中から原曲にないバックコーラスやハモを追加してより合唱曲っぽさが際立つようになった(その分3人体制になってからは表現に苦戦していた印象)。

⑥夜間飛行
シンプルでパワフルなフロアタムのビート。それまでのサカナのライブに足りなかった『感覚的にフロアを沸かせるパワー』がこの曲の登場で一気に変わった感じ。逆にこれに頼りすぎて「また夜間飛行か・・」になった時期も正直あったけどwそれでもふぅちゃんから
サビの斜め指さしが来ると最高に気持ちがアガってそんなこと忘れるんですよね、オタクなんで。

昨日寝落ちしたのもあるけど、1回で全部書ききるつもりがここまでで2日かかった・・・!メジャーデビュー以降はまた次回!(続く)