2023年ベストアルバム
年一しか稼働しないブログの更新の時期がやって参りました。本当歳取ると一年が早い…
今年は来日公演にも、
・Peter Gallway
・June of 44
・Poter Robinson
・Ride
・Summer Sonic(Fall Out Boy,Blur etc...)
・Their/They're/There
・Khotin
・Anxious
・The Hotelier/Origami Angel/Oso Oso/Prince Daddy & Hyena
と沢山行けて、いよいよエンタメ業界も平常運転に戻ってきた実感がありました。そんな2023年を振り返りつつぼんやり決めた30枚です。
30位:Lies/Lies
まさかの再結成&大ブレークを果たしてしまったAmerican Footballのマイク・キンセラと従兄弟のネイト・キンセラのユニットによるデビューアルバム。アメフトと併行してこの2人でやる意味とは…?と最初は思いつつ中身を聞くと納得。エレクトロ〜シンセポップ的なアレンジで、そこにいつものマイク節が乗るとかなり新鮮。曲自体も最近のマイク関連作品の中でも泣き要素強めでかなり良い出来。サポートを入れずに2人だけで敢行した来日公演もサンプラーと生&電子ドラムを同時に操りサウンドメイクを一手に引き受けるネイトの大活躍っぷりが印象的だった。
LIES - Resurrection [OFFICIAL MUSIC VIDEO] - YouTube
29位:Knower Forever/Knower
昨年リリースのアルバム・来日公演ともに素晴らしかったルイス・コールとその公演でオープニングアクトとサポートメンバーと務めたジェネヴィーヴ・アルターディによるユニット。身も蓋もない言い方をするとルイス・コール印なサウンドとメロディをジェネヴィーヴが歌うという感じなんだけど、それが驚くほど新鮮に響く。ノスタルジックなのに未来的、前衛的なのに只管美しい、そんなソウルミュージック。
28位:愛の太陽/くるり
オリジナルドラマーのもっくんが全面参加した『感覚は道標』もヘンテコかつメロディアスでとてもくるりらしいアルバムだったが、個人的にはEPとしてリリースされたこちらを推したい。ミニアルバムとは言えここまでメロディメイカー岸田繁を前面に押し出した作品は初めてではなかろうか?④の『ポケットの中』は個人的にくるりベストソングの一つになった。
27位:El mundo no se hizo en dos días/Pedro Aznar
セル・ヒランやパット・メセニーグループなどで活躍したアルゼンチンを代表するベテランSSWの2枚組新作。フォルクローレ、ラテンポップスを軸にしつつ、クラシックロック・プログレ・ヒップホップ等多彩なジャンルを混ぜ込んでいくスタイルは変わらずで、情感溢れる歌声とベースプレイの両面を堪能できる。ジョン・レジェンドのスペイン語カバーも秀逸。
Pedro Aznar - Todo De Mi (Versión en Español) - YouTube
26位:ムーンライトストリート/うさぎのみみっく!!
元々は福岡をベースに活動していたアイドルグループの初のフルアルバム。川上きらら(推しメン)、新山ひなの既存メンバーに新メンバーとして井出ちよの(3776)と荒瀬みうを迎え実力者揃い新体制となった本作、ジャンルや楽曲派的観念に囚われないドリーミーなアイドルポップスの玉手箱のようなアルバムとなった。初見の度肝を抜くコーラスワークス、曲展開で話題のシンメトリックも収録。
うさぎのみみっく!!『アンジュのジュネーズ』 - YouTube
25位:Long Light/Lusine
90年代後半からエレクトロニカシーンを牽引するベテランの6年ぶりとなる9作目。一聴してLusineとわかる浮遊感のある上物と硬いビート、ゲストボーカルの使い方も巧みで心地よくサウンドの中に溶け込んでいる。チル過ぎずダンサブル過ぎずの絶妙なラインは最早職人芸。ポストクラシカル的な新境地のアプローチも。
Lusine - Zero to Sixty (ft. Sarah Jaffe) [Official Video] - YouTube
24位:Make The Most Of It/New Found Glory
25年以上に渡ってポップパンクシーンで活躍するNFG初のアコースティックアルバム。チャド・ギルバートの癌闘病に触発されて制作した新曲群が出色の出来、既発曲のアコースティックアレンジも改めて原曲の素晴らしさを実感できる。あえてパーカッションを入れず(ドラムのサイラスはリズムギターを担当)、ギター・ベースのみのアレンジがメロディを引き立てて実に沁みる…
New Found Glory - Dream Born Again (Official Music Video) - YouTube
23位:Losing What We Love/Knuckle Puck
現行ポップパンクシーンを代表する5人組の4作目。前作『20:20』は開放的でパンクに囚われない作風が印象的だったが、Pure Noiseに移籍した今作は本来のメランコリックでエモーショナルなパンクに回帰しつつも前作で得たアレンジの幅も活かしたバランス良い内容に。ベテランが気を吐く一方で、現行勢もコンスタントに活きのいい作品を連発する今のパンクシーンの状況は本当に刺激的。
Knuckle Puck "The Tower" (Official Music Video) - YouTube
22位:Norm/Andy Shauf
稀代のソングライターにしてストーリーテラーの4作目。とある男の偏執的な横恋慕を複数視点で描写する不穏な内容とは裏腹に、楽曲は従来のフォーキーなアプローチに比べるとソウル風味でほんの少しアッパーでダンサブルに感じるところも面白い。柔らかな音の余韻と曖昧な解釈を残して閉じる物語、音楽で一冊の小説を読んだように感じるのはこの人ならではだろう。
Andy Shauf - "Wasted On You" - YouTube
21位:But Here We Are/Foo Fighters
ドラマー、テイラー・ホーキンスの急逝後初のアルバム。序盤2曲こそかつてのフーファイを彷彿とさせるアッパーなオルタナチューンだがそれ以降はミドルテンポの時に重厚、時に静謐なナンバーが続く。只管歌われる喪失感と悲しみから脱却しようとする足掻き。弟分と母を喪ったデイブ・グロールにとってこのアルバム作成そのものがセラピーだったのは想像に難くない。10分超えの大作The Teacherのラストでデイブが叫ぶ"Goodbye"はあまりにも重い。精神を消耗する作品だけど、だからこそ聴く意味がある。
Foo Fighters - The Teacher - YouTube
20位:All That Was East Is West of Me Now/Glen Hansard
アイルランドの国民的バンドThe Framesのフロントマンであり、初期バンドメンバーでもあったジョン・カーニー監督の映画ONCEをきっかけに世界的に有名になったSSWの新作。ソロ活動を軸に移してからはフォーク・カントリー要素をどんどん強めていたが、今作ではエレクトリックギターが多用され、バンド時代を彷彿とさせる荒々しさとエモーションを感じる曲もある。キャリアを重ねた渋みと、未だに若々しいメロディの煌めきと衝動性が絶妙に重なってグッとくる。
Glen Hansard - "The Feast Of St. John" - YouTube
19位:Stowaway/Samiam
30年以上のキャリアを誇るベテランメロディックパンクバンドの12年ぶりの新作。リリース期間が空いてもSamiam印のサッドかつキャッチーなパンクチューンは変わらずだし、今作ではアメリカンオルタナ要素強めの楽曲もあり新鮮さもある。セルジよりショーンの書いた曲が多い影響もあるか?進化・成熟を見せつつも軸をぶらさない姿勢は頼もしい限り。
Samiam "Lake Speed" (Official Music Video) - YouTube
18位:Happy Music/Supershy
今や次世代ソウル・R&Bシーンの代表格となったトム・ミッシュによる変名ダンスミュージックプロジェクトのフルアルバム。タイトルの通りひたすらキャッチーで多幸感溢れる楽曲が並ぶ。いい意味で捻りの無い直球感はソングライティングに自信があるゆえだろう。個人的には2016年最高傑作だったSkyker SpenceのProm Kingを彷彿とさせたり。今年一番「そうそう、ダンスミュージックってこういうのでいいんだよ」と思った一枚。
Supershy - Happy Music (Official Video) - YouTube
17位:Almost There/Grapevine
約2年振り18作目の新作。活動が殆ど途切れることなくコンスタントにアルバムを出し続けるのは本当に凄い。前作『新しい果実』はネオソウル的なアプローチに挑戦するなど新機軸を見せたが、今作はそこから更に深化させた印象。フロントマン田中和将がここに来て何度目かの覚醒、詞も曲もボーカルも遠慮無しの振り切れっぷり。それに触発されたかのように亀井亨もキラーチューンを連発し、西川弘剛のギターも冴え渡る。例のあまり炎上しなかったスキャンダルが発端なのかはわからないけど笑、結果的に素晴らしい作品に帰結したのは痛快としか言いようが無い。
GRAPEVINE – 雀の子(Official Lyric Video) - YouTube
16位:The Window/Ratboys
シカゴのインディロックバンドの4作目。バンド形態になって初の作品だった前作Printer's Devilはその年のベストアルバムの一つにも挙げた傑作だったので、今作がどう転ぶか気になっていたが杞憂だった。前作のアグレッシブさを引き継ぎつつも、アルバム全体にアトモスフェリックな空気感が漂うのはプロデューサーのクリス・ワラの影響か?楽曲の即効性という意味では前作かもしれないが、アルバムトータルの完成度では圧倒的に今作。
"It's Alive!" by Ratboys (official video) - YouTube
15位:Jump for Joy/Hiss Golden Messenger
M.C.テイラーによるソロプロジェクトの新作。19年作『Terms Of Surrender』個人的にその年のトップ作だった。毎回安定して良質なアメリカーナを提供しているが、今作は60-70年代のフォークロック総浚いといった感じの内容でバラエティ豊かな楽曲が並ぶ。テイラーの本領はシンプルなフォークソングだと思うのだけど、ある程度アグレッシブな曲や遊び心のある曲があった方がそれが引き立つ。
Hiss Golden Messenger - Nu-Grape (Official Video) - YouTube
14位:The Ballad Of Darren/Blur
ご存知ブリットポップムーブメントをオアシスと共に牽引したバンドの8年振りの新作。自分は元々完全にオアシス派なのだが、ギャラガー兄弟の新作を差し置いてブラーの新作をランクインさせているのは結構異常事態だったりする笑。決して派手さは無いが老獪で捻くれていてそれでいて飛び切りポップでノスタルジック一辺倒にもならない絶妙さ。解散しなかったバンドの強かさを感じる。改めてグレアム・コクソンのヘンテコなギターフレーズ、奇才っぷりにはびびる。
Blur - Barbaric (Live) - YouTube
13位:Fuse/Everything But The Girl
まさかリアルタイムでEBTGの新作のリリースに立ち会えるとは…!音楽界きってのおしどり夫婦として知られながらそれぞれソロ活動に勤しんでいたのでほぼ諦めていただけに驚きだった。前作Temperametalから24年間冷凍して解凍したようなエレクトロチューンは3周くらい回って今のトレンドと合致しているようにすら感じる。ヒンヤリとしているのにどこか心地よいシンセの音色の重なりとトレイシーの歌声に只々溺れていく。絶品。
Everything But The Girl - Run A Red Light - YouTube
12位:Release Spirit/Khotin
カナダ出身のアンビエントアーティストの新作。柔らかなシンセの音色を軸にチルなビート、フィールドレコーディングやサンプリングサウンドが重ねられていく。初めてボーカルをフィーチャーした楽曲が収録されるなど、従来の白昼夢のようなサウンドはそのままによりビートオリエンテッドになった印象。フロアでは無く明け方にベッドルームで鳴らされるダンスミュージック。
Khotin - Fountain, Growth (ft. Tess Roby) (Official Video) - YouTube
11位:Altering a Memory/Feverchild
デビューEPが話題となったベルギー出身のエモ・ポストハードコアバンドの初のフルレングス。Sunny Day Real Estateからの影響を色濃く感じさせるも、ギターアプローチはニュースクールハードコアのエッジーさを感じるし、ボーカルやメロディはThe Get Up Kidsみを感じる時もある。つまるところどこから切り取っても90sエモ好きにとっては号泣必至な作品なのである。
10位:Seven Psalms/Paul Simon
説明不要の大御所による5年振りの新作は7つの楽章からなる33分の組曲。アンビエントな音色やスライドギター、管楽器やコーラスなどが味付け程度に入るがあくまでメインはアコースティックギター1本の弾き語り。82歳とは思えない躍動感のあるギター演奏と情感に満ちた歌声に圧倒される。アフリカ音楽など様々なアプローチに挑戦してきた中で、シンプルで荘厳なフォークミュージックに回帰してきたのはとても興味深い。
9位:Carousel Circle/Carnation
40年のキャリアを誇るベテランバンドの19作目。コロナ禍の抑圧感が色濃く反映された前作から一転、1曲目『ここから - Into the Light』の希望と解放感に満ちたイントロから一気にワクワクさせられる。全体的にポップで適度に捻くれたこれぞカーネーション!という楽曲揃いで、太田譲が初めてカーネーションとして曲を書きボーカルをとった『深ミドリ』も絶妙なアクセントに。ここに来てこんな若々しくキラキラした作品を作ってしまう2人に感嘆…!
8位:Lean In/Gretchen Parlato & Lionel Loueke
現代ジャズシーンを代表するボーカリストとギタリストによる初のコラボ作。リオネルのパーカッシブなギター演奏とスキャット(?)にグレッチェンの独特のリズム感と透明感のあるボーカルが乗り、南米とアフリカの音楽がジャズで融合する唯一無二のサウンドになっている。Foo Fightersの名曲『Walking After You』のカバーも白眉の出来。
7位:Everything Harmony/The Lemon Twigs
様々なクラシックロックを現代に蘇らせる兄弟ユニットによる4作目。今回は「Simon & Garfunkel、Arthur Russell、Moondogにインスパイアされた」そうで確かにジャケもフォークドゥオっぽい。キラキラと洗練されたフォークロック〜ギターポップチューン満載で、Grand PrixあたりのTFCに通じる部分も。アルバムによってコンセプトがガラッと変わるグループだけど、今作は個人的には一番しっくり来たし最高傑作だと思う。
The Lemon Twigs - In My Head (Official Video) - YouTube
6位:One More Time…/Blink-182
一時代を築いたポップパンクバンドが、トム・マーク・トラヴィスの黄金期ラインナップで復活。しかも1曲目から『Anthem part.3』なんて曲から始まったら泣きますわ。純然たるポップパンクナンバーもあれば、それぞれの活動で培った音楽性が反映された曲もあるが、トムとマークのツインボーカルでやったらそれは自然とブリンクになってしまう。交互にボーカルを取る曲多めなのも、必死に関係修復しようとした意図が見えて微笑ましい。前任のAlkaline Trioのマットがいた時期の作品も悪く無かったけど、ライブでトムの曲を歌うマットは無理してる感満載だったので本当に良い元さやだったと思う。
blink-182 - ANTHEM PART 3 (Live Performance Video) - YouTube
5位:Quartet Plus Two/Orbiting Human Circus
Neutral Milk HotelのオリジナルメンバーでありElephant 6の主宰者でもあるジュリアン・コスターを中心としたカルテット。ジャケットから漂ってくるノスタルジーそのままに、再生するとモノクロームの時代の風景が脳裏に浮かんでくるような音楽。只管耳に心地良い少し不思議なジャズ。形容するのも野暮な気がするのでまず聴いて欲しい。
Orbiting Human Circus - I Cover the Waterfront (Official Visualizer) - YouTube
4位:Fools/Dan Croll
リバプール出身ロサンゼルス在住のSSW。その経歴通りの音というか笑、英国人らしいウェットさとカリフォルニアのカラッとしたフィーリングが絶妙にミックスされている。⑧『Piece Of The Action』なんかは故郷の大先輩ポール・マッカートニーの未発表かと錯覚するくらい巧みなオマージュになっているし、FOWぽさも感じる。所謂ポップマエストロ系のSSW・バンドが好きな人なら確実に刺さる曲があるはず。
3位:Leather Blvd./B. Cool-Aid
ラッパーPINK SIIFUとプロデューサーのAHWLEEによるデュオ。ジャンルとしてはヒップホップなのだろうが、ソウル・R&B、ファンクなどなどブラックミュージック総浚いな感じの心地良いノスタルジックな曖昧さ。1時間超えの最近では珍しく長尺のアルバムではあるが、日常のBGMとしてサラッと聴き流すも良し、ベースラインやビートに耳を傾けてトラックに没入するも良しで、長さを感じさせない密度と適度な気軽さがある。
2位:Brightest Days/Origami Angel
デビュー以降着実にパンク〜エモキッズの支持を拡大しているツーピースによる新作。今年待望の初来日も果たした。ウクレレから始まる①や爆音サーフロック②など今までに無かったアレンジや構成の妙を見せつつも、あくまで軸は明快でポップなパンクロックなのは変わらず。出し惜しみ無しにポップなメロディ思わずニンマリ。歌われるのはあの頃一番楽しかった夏、2度と戻れない10代のあの感情、8曲のミックステープという短さ・コンセプトも刹那的で丁度良い。
Origami Angel - Thank You, New Jersey (Official Music Video) - YouTube
1位:Would You Miss It?/KOYO
ニューヨーク出身のエモーショナルハードコアバンドの初のフルアルバム。個人的にボーカルの厳つい見た目でオールドスクール系だと思って敬遠していたのだけど笑、聴いてみたらびっくり!現行ポップパンクから00年代のエモ、更には往年のSamiamのようなエモーショナルメロディックまで幅広い影響を感じさせるバンドサウンドに乗せて、切ないメロディ&激しいボーカルで歌い上げる。バンド名は日本語の紅葉から取ったという。侘び寂びに通じるサッド感に溢れた今年を代表するパンク盤となった。来年1月に待望の初来日、楽しみ過ぎる!
Koyo "You're On The List (Minus One)" (Official Music Video) - YouTube
こんな感じでした、今年は割とジャンルバランス良い感じ?10月以降にこれは!っというリリースがあって結構悩みました。ライブ行く時間が増えた分ここ数年のコロナ禍より音楽を聴く時間は少くなった…というか聴く枚数は若干減って一枚一枚しっかり聴くようになった気もしますね。物価高もあるけど、「このアーティストは毎回買ってるから」みたいな感じで新譜買えなくなった。なんにせよ、感覚的に良いと感じたものが全て、その気持ちは忘れずにまた来年(?)
2022年ベストアルバム
年一の更新です。歳をとるごとに一年があっという間に感じる今日この頃、2022年に聴くべき盤を聴き切れたかと問われると凄く自信がありませんが、今年もシンプルに「良い!」と思った作品を30枚選んでみました。
30位:The Long Way, The Slow Way/Camp Trash
昨年リリースのデビュー7インチが界隈で話題となったフロリダのエモ〜パワーポップ4ピースの初のアルバム。SuperchunkやApples In Stereoあたりのインディギターロック〜初期TGUKあたりのパンキッシュなエモの影響を感じるサウンドとメロディはまず嫌いな人がいないやつ。ミドルテンポの楽曲を効果的に配置して最後までテンションが落ちない構成は新人バンドらしからぬ職人気質も感じる。
Camp Trash- Let It Ride (OFFICIAL VIDEO) - YouTube
29位:God Save the Animals/Alex G
名義を(Sandy)Alex G→Alex Gに戻しての新作。(Sandy)期の作品は比較的モダンで素直にメロディアスなアプローチが増えていたが、今作はよりハイファイでジャンルレスなプロダクションながら初期作にも通じる不気味で不安なアレンジが戻ってきた。コロナ禍の混沌がそのまま音になったようなアンバランスさが不思議と耳に心地よい。そんな中終盤にふっと投入されるMiraclesは過去最高に美しい曲。
28位:Will Of The People/Muse
ジョン・レノン、クイーン、マリリンマンソンをごった煮にしたような①からガッツポーズ!個人的にMUSEというバンドの魅力は過剰性だと思っているので、バンドサウンド〜エレクトロサウンドの両面でカッコ良さもダサさ(⑥とかMUSE以外のバンドがやったらブチ切れ案件w)も全開にした今作は久々の快作。スケール感のある楽曲は確実に大箱のライブで映えそう。
MUSE - WILL OF THE PEOPLE [Official Music Video] - YouTube
27位:Their/Their're/Three / Their/They're/There
現行エモシーン最重要人物Evan WeissがInto It,Over It、Pet Symmetryと併行して活動しているエモリバイバルバンドの初アルバム。すっかり売れっ子になったMike Kinsellaは脱退してしまったものの後任ドラマーJaredのプレイはMatthewの変則タッピングギターとの相性も良く、最近のEvanの作品の中で最も正統派エモ的な激しさを感じる一枚に。
A Symphony of Sparrows - YouTube
26位:Octante/Delfina Mancardo
アルゼンチンの新鋭SSWのデビューアルバム。まず再生して一音目のピアノにハッとさせられる。ネオフォルクローレ的なサウンドを軸にしつつもメロディはジャズ〜ポップス的な要素も濃いめで、ノラ・ジョーンズなどのジャズ畑の女性SSWが好きな人でもスッと受け入れられるのでは?
Little Red Boat - Delfina Mancardo - YouTube
25位:It's Deliberate/Peter Gallway & The Real Band
Fifth Avenue Band,Ohio Knoxなどで活動してきたベテランSSWの新作。シンプルで無骨なバンドアンサンブル、淡々とビターな中にもふっと彩りを感じるようなメロディラインは最早職人芸。過剰でも過少でも無いこのオールドファッションなサウンドは今の時代には逆に新鮮に、個性的に感じる。ボス、ブルース・スプリングスティーンが推薦文を書いているのも改めてミュージシャンズミュージシャンとしての影響力の大きさに驚く。
Peter Gallway & The Real Band "It's Deliberate" - YouTube
24位:World Record/TWEEDEES
元Cymbalsの沖井礼二とシンガー清浦夏実によるユニットの4年ぶりとなる4作目。個人的には大傑作のデビュー作以降の作品は若干しっくりこない部分もあったけど、今作は爽やかかつ躍動的な①②の流れで一発ノックアウト。人力sine(Cymbalsの3rdアルバム)とでも言うべき?ロック要素薄めなのにドライブ感があるポップミュージックのメリーゴーランド。Soleil、竹達彩奈提供曲のセルフカバーも絶妙。
TWEEDEES - Victoria (Offical Video) - YouTube
23位:erewhon/erewhon
佐々木喫茶が全面プロデュースを手がけるティーンズアイドルグループのデビューミニアルバム。喫茶節全開のどポップでキャッチーなエレクトロチューンとあどけない歌声の相性は抜群。特に①"りぴりぴ"は今年のベストアイドルソング&MV(百合的世界観が最高)の一つに挙げたい。永眠すみれちゃん推しです。
22位:Hugo/Loyle Carner
サウスロンドンのヒップホップシーンの代表格となったラッパーの3作目。これまでのネオソウル的な作風から一変、ジャズやゴスペルに寄せたマイナーコードで哀愁を帯びたトラックが印象的。自身のパーソナリティや社会問題に切り込んだダークでシリアスな内容ながら、怒りの感情を前面に出さないロイルのラップが絶妙なフラット感というか暗くなり過ぎずのバランスを保っている。
21位:Squeeze/SASAMI
前作では穏やかでチルなギターポップを奏でていたLAで活動する韓国系SSWが新作で脅威の変貌。日本の妖怪にインスピレーションを受けたビジュアル、ポストメタル・インダストリアルからの影響を前面に出したサウンドに。一方で前作からのフォーキーな楽曲も健在で、両極端なのにアルバムとして自然な流れになっているのはどんなアレンジでも根底にあるヒンヤリとしたメロディゆえだろうか?
SASAMI - Skin A Rat (Official Audio) - YouTube
20位:CAARRS/PENPALS
90年代後半〜00年代前半にかけてスマッシュヒットを飛ばしたオルタナ〜パワーポップバンドによる18年ぶりの新作。昨年同一メンバーによるAFOK名義でのリリースはあったが、ダークでグランジ色の強かったAFOKと比べると今作は最初期のPENPALSが戻ってきたかのようなローファイでオルタナでポップなサウンドに一曲目から快哉を叫びたくなる。最高のカムバックアルバム!
19位:11:11/Pinegrove
Pinegroveは個人的に「良いのはわかるけど、インディロックシーンの救世主扱いされるには過大評価じゃね?」とずっと思っていたのだけど、今作は正直めちゃめちゃ良かった。②の速くて短いAlaskaがアルバム全体の滑走路的な役割となって、それ以降はずっとミドルテンポなのに最後までダレない。唐突にスパッと終わるアルバムラストも良い。
Pinegrove - "Alaska" (Official Lyric Video) - YouTube
18位:Steady/Sloan
カナダのビートルズ、パワーポップの至宝Sloanの13thアルバム。メンバー4人それぞれが曲を書き歌う不変のスタイルで届けられるキャッチーな楽曲。無駄の無い骨太な演奏に、美麗なコーラスワーク。今これほどシンプルにロックを聴いた気持ちになるアルバムがどれだけあるか?Steady(地道・着実)という言葉が本当に似合うバンド、リスペクト!
Sloan - Scratch The Surface - YouTube
17位:EBM/Editors
Benjamin John Power (Blanck Mass)が加入後初のアルバム。オリジナルギタリストの脱退でテクノ〜ニューウェーブ路線に進んだ3rdアルバム以降の物足りなさが嘘のような振り切れ方。これは1stアルバムThe Back Roomのキレと衝動性を全く違うアプローチでぶつけたアルバムだ。攻撃的なエレクトロサウンドと荒ぶるビートに耽美なメロディ、ロックバンド的ダイナミズムが見事に融合した傑作。
Editors - Picturesque (Official Video) - YouTube
16位:Quality Over Opinion/Louis Cole
ドラマー・プロデューサーとしても活躍する多彩なアーティストの4年ぶりの新作。デジタルファンクを突き詰めた前作の流れを汲んだ楽曲も勿論あるが、今作で印象に残るのはSSWルイス・コールのメロディメイカー、シンガーとしての実力。一聴するととりとめがないように感じる楽曲群も聴き終わる頃にはすっきり纏まってしまうのも不思議。12月の来日公演も素晴らしかった。
Not Needed Anymore - Louis Cole - YouTube
15位:Jacob's Ladder/Brad Mehldau
毎年精力的に多様な作品を作り続けるジャズピアニストの新作はメルドー流プログレッシブロック。ピアノのみならず攻撃的なシンセのフレーズや、メルドー作品では珍しいボーカル、アジテートやアコギも導入するなど、これまでもチラ見せしていたクラシックロックへの造詣の深さを前面に出している。素直にカッコいい!の一言。
14位:マーブルワールド/com
自分が現代アイドルの音楽が好きなのは、雑多なジャンルを多種多様なアプローチでポップミュージックに落とし込んでいるから。今年一番それを感じた作品がこれ。3→4人体制になるにあたって作成した全曲新曲の初のフルアルバム。ジャンルレスなサウンド、躍動感のある複雑なリズム、でもしっかりポップ、4者4様の華やかなボーカル、これぞアイドルだからできるアプローチ。藤谷寧々ちゃん推しです。
comme moi-アグリーダックリング[MUSIC VIDEO] - YouTube
13位:Waiting for the End to Begin/Overo
Perfect FutureとFootball Etc.のメンバー2名ずつで結成されたポストHCバンドの2ndアルバム。時に叫び、時に冷淡に歌い呟くBrendanとLindsayによる男女ツインボーカルは破壊力抜群。クリーン⇄バーストパートを巧みに使い分けた緩急のある展開に、今作は菅弦楽器も導入しよりドラマチックなサウンドに。リバイバル勢や現行激情勢とは一線を画す滅びの美学を感じるエモ。
Overo - Walls [Music Video] - YouTube
12位:Doggerel/Pixies
再結成後4作目となる3年ぶりのアルバム。再結成当初はフランク・ブラックのソロをピクシーズサウンドでやってる感、若干ポップ過ぎる気配があったが今作で遂にフランクもバンドも完全ピクシーズモードになった感。適度に捻くれ適度にポップな絶妙なバランスが帰ってきて、楽曲のクオリティも初期の傑作に劣らない。メインボーカルの曲は無いもののパズのコーラス、ベースがいい仕事しまくっていて影のMVP。来日公演でも現役ライブバンドっぷりを思う存分発揮してくれて頼もしかった。
Pixies - Nomatterday (Official Lyric Video) - YouTube
11位:At Scaramouche/Shabason & Krgovich
サックスプレイヤー兼アンビエントミュージシャンと職人ポップスを奏でるSSWによるカナダ人同士のデュオ作。Shabasonのソロ作は以前から愛聴していたが、彼のアンビエントサウンドが歌物にこれほどしっくりくるとは嬉しい驚き。ニューエイジ的サウンドに穏やかな歌声とメロディ、そこに漂うアンビエンス、完璧な心地良さ。
Shabason & Krgovich / I Am So Happy With My Little Dog - YouTube
10位:Florist/Florist
アンビエントのソロ名義でも活動するEmily.A.Spragueを中心に結成されたフォークバンドの4作目。Emily1人でレコーディングされた前作の悲壮感は薄らぎ、シンプルながら豊穣なバンドアンサンブル、さらに彼女のアンビエント作品の要素も多分に織り込まれた静謐で温かみを感じる作品となった。深夜に一人で聴きたくなる、孤独感をそっと包み込むような音楽。
Florist - Spring in Hours (Official Music Video) - YouTube
9位:fifthRuler./tipToe.
本来であれば6月にリリースされたアルバムcandlelight(これも名作です、念のため)が選出予定だったが、12月にリリースされたこの作品が傑作過ぎたため確定直前に急遽差し替えに。"雨"をテーマにした5曲にインストも含めたミニアルバム。1曲を除き現代アイドルとしては比較的珍しい4-6分台のミドルテンポの楽曲が中心となり、物理・心理的な雨模様に重なるようなアレンジ、詞世界が展開される。個人的にはエレクトロニカにポエトリーなラップが絡む②が出色の出来。柚月りんちゃん推しです。
8位:Martelo/Rafaerl Martini
ブラジルの現行音楽シーンを代表するミナスの才人の新作は、エレクトロサウンドも導入した長尺のプログレッシブなラテンジャズインストに。今年デュオで来日したアントニオ・ロウレイロもドラムで参加するシクステットのアンサンブルによる複雑で緊張感のある反復と展開の連続にゾクゾク。
7位:Du Und Ich/Pohgoh
90年代のフィメールエモの代表格として人気を博し、3年前に再結成した4人組の通算3作目。ボーカルSusieが長年多発性硬化症と闘病しているとは思えないほどポジティブで爽やかに突き抜けたポップさにキュンキュン!鍵盤やストリングスを効果的に差し込んだプロデューサーJ.ロビンス御大の手腕も見事。これはもうエモとか取っ払って全てのギターポップ好きが聴くべきやつ!
Pohgoh "Weeds" (Official Music Video) - Available Now - YouTube
6位:Emotional Creature/Beach Bunny
2020年リリースのデビュー作で一躍パワーポップ新世代として注目された4ピースバンドの新作。90'sのUSオルタナや、アヴリルなどの00'Sガールズロックのいいとこ取りのパンキッシュなパワーポップ。より強靭でラウドになったバンドアンサンブルとショーン・オキーフによるハイファイなサウンドプロダクションも楽曲の甘さを引き立てる。今年度最高フィメールギターポップはこれ!(Pohgohとどっちにするか迷ったけどw)
Beach Bunny - Entropy (Official Music Video) - YouTube
5位:Meu Coco/Caetano Veloso
御年80歳(?!)未だにブラジル音楽の第一線を走り続ける鬼才の新作。流石にこれくらいのキャリアになると、年相応の枯れ感のある落ち着いた作品になってもおかしくないのだけど、一切そんな気配が無いのがカエターノがカエターノたる所以。様々な音楽要素を貪欲に吸収して独自のMPBを作り上げる姿勢はカッコ良過ぎる…!
Caetano Veloso - Meu Coco (Visualizer) - YouTube
4位:Being Funny In A Foreign Language/the 1975
超大作とも言える前作Notes on a Conditional Formは長尺で構成もかなり癖が強く、個々の楽曲は素晴らしかったもののアルバムとしてはなかなか消化できない作品だった。今作はエレクトロ要素を極力排除、アコースティックな音色を多用し、バンド(固定メンバーがどんどん増殖するサポートメンバー含め)としてのThe 1975の現在、ありのままの姿を映した作品だと感じた。前作がホワイトアルバムだとしたらその後にさらっとラバーソウルをリリースしたみたいな。ちなみに自分が一番好きなビートルズの作品はラバーソウル、そういうこと。
The 1975 - I'm In Love With You (Official Video) - YouTube
3位:Asphalt Meadows/Death Cab for Cutie
サウンド面の核であったクリス・ワラ脱退以降のデスキャブの作品はどう足掻いてもその呪縛から抜け出せていない印象だったが、今作で漸く突き抜けた。エレクトロな導入から轟音のサビに突入する①からの歪んだサウンドで突き進む②で掴みはOK、そこからお得意のメランコリックで美メロな楽曲を連発していく。クリスの影響力を否定せず、今の5人でしかできないことをやっていく、そこの最良のバランスを見つけた結果なのだろうか?と思える現体制最高傑作。
Death Cab for Cutie - Wheat Like Waves (Official Audio) - YouTube
2位:Angel in Realtime /Gang of Youths
オーストラリア・シドニー出身で現在はロンドンを拠点に活動する5人組オルタナロックバンドの3作目。90'sのブリットポップ、00年代のオルタナに強い影響を受けたと思われるバンドサウンド、そしてU2のボノを彷彿とさせるDavid Le'aupepeの力強く華のあるボーカル、ここまでアリーナクラスのダイナミズムを感じさせるバンドには久々に出会った。現代音楽やワールドミュージック、IDM、80'sポップス(⑥のThe Way It Isの引用は見事)的な要素も巧みに織り込んで決して時代錯誤、ノスタルジックな作品に終わらせないセンスもずば抜けている。もっと知名度を上げて来日して欲しい。
Gang of Youths - tend the garden (Live Session) - YouTube
1位:Quitters/Christian Lee Hutson
カリフォルニア出身のSSWによる2ndアルバム。フィービー・ブリジャーズとBright Eyesのコナー・オバーストによる共同プロデュース。エリオット・スミスやペイヴメントを彷彿とさせるメランコリックなメロディをどこか捻くれたポップセンスでローファイに表現していく。派手さは無いのに随所に散りばめられたメロディのフックにどんどん夢中になり、終わった頃にはもう一回再生してしまう。多分今年一番聴いたアルバム。
Christian Lee Hutson - "State Bird" - YouTube
これ以外に30枚に入れるかギリギリ迷ったのが、このあたりです(順不同)
Dog Hours/Big Nothing
Heavy Pendulum/Cave In
Vinyl Days/Logic
Heart on My Sleeve/Ella Mai
Requiem/Korn
Ninja of Four/the band apart
SAKANA e.p./downt
fruitful days/原田知世
Va siendo tiempo/Carlos Aguirre Quinteto
Wild Loneliness/Superchunk
単発的に手っ取り早くバズる曲、音楽的バックグラウンドとかの背景を取っ払ったわかりやすさが求められる傾向が更に強くなった音楽シーンですが、やっぱりアルバムでしかできない表現がある、アルバムというフォーマットっていいなと思えた一年でした。2023年は少しレコードの高騰が落ち着けばいいですね…ではまた来年(?)
2021年ベストアルバム
1年ぶりの更新となります。そして1年ぶりの年間ベストアルバムの記事になります。
コロナ禍以降、世の中の音楽のトレンドが見えづらくなったというか、チャートやトレンドを追う必要性が感じられずざっと攫う程度でいいやとなったり、今までお付き合い的に聴き続けてきたアーティストの新作にもイマイチ手が伸びないこともあったり、益々聴いて直感的に良いと思うものに流れていった気がします。
今年も仕事の合間にうーんと首を捻りつつ、感覚的に30枚選んでみたので、すごくお暇な人だけお付き合いください。
※基本今年リリースの新作ですが、一部昨年リリース(フィジカルリリースが今年だったものとか)の作品もあります
30位『Pajara』Clara Presta
アルゼンチンのコルドバ出身、ピアノをベースにフォルクローレやジャズ、インディフォークまで幅広い音楽性を持つ女性シンガーソングライター。ジャケ写通りの躍動感と静謐さの両面が30分弱の中に見事に詰まっている。
29位『Don't Know What I Am』Alien Boy
ポートランドのインディロックバンド。エモーショナルシューゲイザーとでも言うべきノイジーなギターにヘロヘロボーカルに甘々なメロディという最強の組み合わせ。
28位『Infinite Granite』Deafheaven
ブラックメタルシューゲイザーの代表格の新作はまさかの脱メタル&絶叫でドリームポップ的な作品に。結果としてバンドのメロディの良さが浮き彫りとなり新境地を切り拓いたと同時に、溜めに溜めた終盤の絶叫のカタルシスが見事。
Deafheaven - In Blur (Official Video) - YouTube
27位『曖昧なアルバム1』美味しい曖昧
楽曲派シーンで注目を集める5人組の1stフルアルバム。桜えび〜ずの『灼熱とアイスクリーム』を書いたピオーネを中心に楽曲提供しており、ファンク・マスロック・ダンスミュージックなどのミクスチャーでありながら、どこか平熱感漂うサウンドとシニカルな歌詞が印象的。
美味しい曖昧『sugar beat』MV - YouTube
26位『Our Bande Apart』Third Eye Blind
90年代後半に全米チャートを席巻したベテランオルタナバンドの新作。キャッチーなメロディはそのままに、スティーブン・ジェンキンスの音楽ルーツの一つ80'sUKロックからの影響、オマージュが色濃く出た作品となった。派手さこそ無いが、いい具合に力の抜けた佳曲揃い。
Third Eye Blind - Again - YouTube
25位『En el jardin』Yotam Silberstein & Carlos Aguirre
イスラエルのジャズギタリストとアルゼンチンを代表するマルチなアーティストのギターとピアノのドュオ作。パーカッションや環境音も入れつつも、軸となるのは川の流れのように絡み合う2人の演奏。現代のUndercurrentと言っても過言では無い。
01 Fairytale (Yotam Silberstein) - YouTube
24位『TEAM PUPA』ピューパ!!
DIYなスタンスを貫くさなぎ系アイドルグループの4曲入りEP。ピューパ!!はテクノ〜エレクトロニカ的な側面とエモリバイバル〜シューゲイザー的な側面がありその両面が合わさることもあるが、今作は前者にフォーカスした作品。IDMを極限までポップスと融和させた楽曲群は後述するポーター・ロビンソンとのシンクロすら感じる。
ノーモアクライ - ピューパ!! (Official Music Video) - YouTube
23位『僕と君の希求』空気公団
空気公団が山崎ゆかりひとりのグループとなって初の作品だが、まるで新人バンドのデビュー作のような瑞々しさに驚く。優しいフォークソングからキラキラのギターポップまで、シンプルに良い曲&良い歌。
空気公団「記憶の束」Official Music Video - YouTube
22位『Muito Alem do Fim』Lo Borges
ミナスを代表する大ベテランSSWの3年連続のリリースとなる新作。その精力的な姿勢もさることながら、楽曲の質が落ちないのも凄い。アコースティック寄りだった近作より若干ロック的なアプローチが増えたが、清涼感たっぷりのメロディラインをより際立たせている。
Lô Borges - Muito Além do Fim (Part. Paulinho Moska) (Lyric Vídeo) - YouTube
21位『Axiom』Harker
UKはブライトン出身のメロディックパンクバンドの3作目。前作まではUSエモメロディックからの影響が顕著だったが、今作はシューゲイザー的アプローチなどUKバンドらしいウェットさが前面に出た作風に。ダークで怒りに満ちた攻撃性と従来のメロディックなセンスが見事に融合している。
Harker - Hellion (Lyric Video) #RSDUnsigned - YouTube
20位『Fool』Lucie,too
オリジナルメンバーの相次ぐ脱退を乗り越えて2人体制で再スタートを切ったガールズバンドの初のフルアルバム。ポップさの中の隠し味だったオルタナ〜エモからの影響を曝け出し、過去最高に攻撃的でありながらポップなメロディセンスが引き立つ傑作。
Lucie,Too - シワの種 Shiwa no tane (Official Music Video) - YouTube
19位『Los Suenos de los Otros』Mariano Gallardo Pahlen
ウルグアイのSSWのデビュー作。まるでビートルズやビーチボーイズを彷彿とさせる重厚なオーケストラサウンドとフォルクローレ的な南米ルーツ音楽が見事に融合している。60-70年代のロックポップス好きは勿論、Flaming Lipsやエレファント6周辺のバンドが好きな人にもお薦めできる快作。
18位『強くて消えそうな不器用な旋律』WT☆Egret
姫路をベースに活動するローカルアイドルグループの初のフルアルバム。ファンク、ディスコ、ロック、アニソンなど様々なエッセンスを含んだ楽曲を重厚かつ爽やかなコーラスワーク(ライブの再現度も凄い)で歌い上げる。特に坂本真綾を彷彿とさせる楽曲をアイドルグループで表現するアプローチは盲点だった。
通称ホワイトアルバム以降迷走に迷走を重ねていたWeezerが今年はチェンバーポップな『Ok Human』(こちらもなかなかの佳作)とリヴァースのルーツであるHRHMへのオマージュである今作の2枚をリリース。趣味全開なサウンドで攻めた結果、リヴァースの筆も乗ったのか初期すら彷彿とさせるメロディラインが復活。久々の快作となった。
Weezer - Sheila Can Do It (Audio) - YouTube
16位『Music For Psychedelic Therapy』Jon Hopkins
コールドプレイとのコラボレーションで一躍有名になったアーティストの3作目。元々アンビエント的な要素を多分に持ったダンスミュージックだったが、今作ではビートを排した完全アンビエント作。複雑に混じり合う音の重なり、情報量の多さにも関わらず耳に優しく心地良く聴けてしまう。今年度ベスト快眠導入音楽。
Jon Hopkins - Music For Psychedelic Therapy (Excerpt) - YouTube
15位『Blue Heron』Jodi
元Pinegroveのメンバーによるソロプロジェクト。フォーキーで乾いたシンプルなサウンドとグッドメロディ、Red House Paintersを彷彿とさせる淡々としたスロウコア感もあり、インディフォーク好きは勿論ポストハードコアファンにもアピールできる作品。個人的には今のPinegroveより好き。
Jodi - "Hawks" (Official Video) - YouTube
14位『Turntable Overture』Carnation
80年代から現代までジャパニーズロックシーンを一線で走り続けるバンドの18作目の新作。骨太でベテランらしい枯れ感と、30年選手とは思えないポップな瑞々しさを両立させてくるのはもはや職人芸。コロナ禍の状況に影響を受けたと思われる歌詞、特にアルバムラストの一節、"もう雨なんて降らせない"に込められた祈りと決意に痺れる。
カーネーション「SUPER RIDE」Official Music Video - YouTube
13位『Queens Of The Summer Hotel』Aimee Mann
数々の音楽賞も受賞するベテラン女性SSWの新作は当初手がける予定だった(コロナ禍で中止)ミュージカルの脚本にインスパイアされた楽曲で構成されている。そこを意識してか、ピアノとオーケストラが軸のビートルズ後期のポールを彷彿とさせるチェンバーポップ的なアプローチが見事にハマっている。
Aimee Mann - Suicide Is Murder - YouTube
12位『Vertigo Days』The Notwist
ドイツのベテランバンドの9作目。3人編成となり、テニスコーツやフアナ・モリーナなどゲストも積極的に登用している。インディロックとエレクトロニカをクロスオーバーさせた音楽性をベースにしつつも、今作はよりクラウトロック色が強まり、トライバルなビートも導入し、幻覚的な音像を作り上げている。
The Notwist: Where You Find Me - YouTube
11位『Future Suits』Pet Symmetry
into it,over itなどのバンド活動やプロデュース、レーベル運営などエモシーンでマルチに活躍するEvan WeissがDowsing、What Givesのメンバーと組んだスリーピースの3作目。よりシリアスに広義のロック化していくiioiに対して、1曲目からWeezerやMCSを彷彿とさせるパワーポップ全開でニヤリ。肩肘張らずに作った遊び心満載で『Van Weezer』との偶然のシンクロも感じる。
Pet Symmetry - 2021: A Personal Space Odyssey (Official Music Video) - YouTube
10位『Te』Diego Schissi Quinteto
現代タンゴの第一人者により5年ぶりの新作。ピアソラが確立したタンゴの伝統の編成でその枠を破壊するような攻撃性と、静謐で美しいピアノのメロディの両面がより深化。ドラム不在ながら各楽器がパーカッシブなアプローチで躍動感を生み出していくアンサンブルは圧巻。
9位『Muck』Dikembe
リリースは昨年だが、フィジカル流通が今年に入ってからだったので今年のベスト作に。エモリバイバルにカテゴライズされつつも癖の強い陰鬱なボーカルと独自の音楽性で評価されてきたフロリダ産4人組の新作は完全にエモの枠を脱却。オルタナともハードコアともグランジともつかない、ねっとり纏わりつくような暗黒の美しさ。これは2020年代のイン・ユーテロ?
Dikembe - All Got Sick [OFFICIAL MUSIC VIDEO] - YouTube
8位『True Love』Hovvdy
テキサス州オースティンをベースに活動するフォークドュオの4作目。傑作だった2nd『Cranberry』に対して前作『Heavy Lifter』は牧歌的でポップ過ぎた気配があり、個人的にはあまりハマれなかった。今作は両作品の良いとこどりで、フォーキーな感触は引き継ぎつつ、ローファイで陰のあるスロウコア的な要素がいい塩梅で組み込まれている。終盤の感情的なリフレインに圧倒されるタイトルトラックは今年のベストソングの一つ。
Hovvdy - True Love (Official Video) - YouTube
7位『Flor』Gretchen Parlato
NYで活動するジャズボーカリストの10年ぶりとなるオリジナル作。ジャズの枠にとどまらず、南米やアフリカ、クラシックまで様々なジャンルを横断しつつも、一つの世界観で纏まっているのはグレッチェンの歌の力ゆえ。タイトル通り色とりどりの花が咲き誇るような傑作。
6位『Local Valley』Jose Gonzalez
スウェーデン在住のアルゼンチン人の6年ぶりの新作。ガットギターの弾き語りの基本的なスタイルは変わらずも、トライバルなビートが前面に出てよりポジティブな空気を感じる楽曲が増えた印象。インディフォーク的な要素と南米音楽的な要素が絶妙なバランスでミックスされ、個人的に過去最高傑作。
José González - Swing (Official Music Video) - YouTube
5位『Really From』Really From
People Like Youから改名して初のアルバム。アメフト直系のポストロック・マスロックサウンドとジャズ的要素が見事に絡み合う。エモ系のバンドを多く取り扱うTopshelfからのリリースだが、多方面で話題になったのも頷ける。流麗な女性ボーカルとラフで調子外れな男性ボーカルのコンビネーションも素晴らしい。
"I Live Here Now" by Really From - YouTube
4位『Walkman』Bad Bad Hats
ミネアポリス出身のスリーピースインディロックバンドの新作。That Dog的な軽快なギターポップサウンドにエイミー・マンを彷彿とさせるボーカルが乗る。パワーポップ・アメリカンオルタナ好きは勿論、パンク〜フィメールエモ好きにもアピールできる要素もあり。今必要なのはこういう単純明快なロックンロールなのかも。
Bad Bad Hats - Detroit Basketball (Official Music Video) - YouTube
3位『Sling』Clairo
2017年のデビュー作が大きな話題を呼んだSSWの2作目。前作は正直、「あー今時の宅録っぽい感じね」とスルーしていたのだけど、犬を飼い始めたことにインスピレーションされたという今作は60-70'sのフォークを今時のエッセンスで調理した感じで、ノスタルジックかつモダンなサウンドが素晴らしい。メロディがシンプルなアレンジだからこそ光る。
2位『Nurture』Porter Robinson
テクノ・エレクトロニカも好きだけどEDMはそんなに聴かない自分が以前から聴いていた数少ないアーティストの7年ぶりの新作。Madeonとのコラボ『Shelter』の時点でその傾向は出ていたけど、今作は"極限までポップミュージックと融和させたIDM"。オーガニックなサウンドの心地よさもさることながら、どことなく日本人の琴線に触れる(ジャパニーズカルチャーへの造詣が深い影響?)メロディの魅力には抗えない。
Porter Robinson - Look at the Sky (Official Music Video) - YouTube
1位『Gami Gang』Origami Angel
前作『Somewhere City』がパンク〜エモ界隈で大きな話題を呼んだツーピースの新作はなんと20曲入りの大ボリューム(LPでは2枚組)。"速い短い"が売りのインディパンクシーンではかなり挑戦的な内容だが、どキャッチーな楽曲達が矢継ぎ早に畳み掛けてきて、正直飽きるダレる瞬間が全く無い。楽曲のアレンジも、適度に幅が広がりつつも本来の良さを損なわずで、前作からの短いスパンでこれだけ質の高い作品を出してしまう意欲に畏れ入る。ロック全盛の時代であればもっと話題になったのにと思うと残念、というかこんな良曲揃いの作品がコロナ禍で埋もれるのは勿体無い。今からでも聴くべし。
【総評】
こうして見ると今年ヒップホップやR&B系ゼロですね…特にヒップホップ系はフィジカルで出てないものも多くてあんまチェックできなかったのもあるけど。Tyler The CreatorとCommonくらいかな?ちゃんと聴いて割と良かったの。R&BだとランクインしなかったけどCelesteとかダイアナ・ロスは良かったですね。後、ギリ選外だったところだとGrapevine、ポニーのヒサミツ、downt、Anushuka、Dinosaur Jr.、CFCF、Andy Stottあたりでしょうか?
なんだかんだ自分にとっての"良いメロディ"×"心地よい音"の相乗効果が高いもの順て感じですかね?トップ10以降は年が明けたら多少入れ替わったりしそうですが、今の気分てことで。結局これ作るの6日かかった…誰かに見てもらいたいというより自分にとっての今年の音楽を整理できるのでいいんだけど。
アルバムという概念自体が世間的には古いものになりつつある中ですが、未だにアルバムを作ることに拘っているアーティストを応援したいですね。後なんでもレコードで出しときゃいいだろ的な雑なレコードバブルはそろそろ弾けて適正な状況に戻ってほしい。ではまた一年後に(?)
2020年ベストアルバム
ここはsora tob sakanaへの想いを成仏させるために短期間だけ開設したブログで、もう更新することは無いと思ってましたが、毎年Twitterで年間ベストアルバムを更新するのが結構手間なのでここを使ったほうが楽なんじゃね?と思い立ちました。というわけで今年のTOP30です。
今年はコロナ禍の影響もあってか新作のリリースがぐっと減りました。今年買った純然たる新作は去年より100枚くらい少なかったみたいです。でも一時期在宅ワークしたり、ライブも無く家にいることが多くなり、そしてレコードプレイヤーを新しく買った影響もあり、音楽を聴く時間は確実に増えました。そして、エモ・パンク・HCのレコードを収集することに目覚めた結果、音楽につぎ込んだ金は去年と対して変わらない気が・・・どうでもいい前段は置いといて始めます。
●No.30 You'll Be Fine/Hot Mulligan
ミシガンのエモリバイバルバンドの2枚目のフルアルバム。1曲目こそトゥインクルなイントロだが、全体的にはモダンポップパンク色が強く、耳に残るがなるような歌声が印象的。でも決してスクリーモ~激情的にはならずこのダミ声がひたすら切ないメロディを際立たせる。同郷のCharmerの新作Ivy(今回は惜しくも選外)もそうだったが、今年は典型的なエモリバイバルから脱却した”聴かせる”作品が個人的に刺さった。
●No.29 Lament/Touche Amore
現行ポスト・ハードコア代表格バンドの5作目。元々、典型的な激情系の枠に収まらないスタイリッシュさを持つバンドだったが、ロス・ロビンソンをプロデューサーに迎えた今作でより多彩なアプローチを追求。ポストパンク、カントリー、ピアノバラードなどサウンドの幅を広げつつも、Jeremy Bolmの壮絶でエモーショナルな歌唱は不変。
●No.28 The View From Halfway Down/Andy Bell
シューゲイザーレジェンドRIDEのフロントマンにして、OASISの元メンバーでもある才人の初のソロ名義の作品。60年代のサイケデリックロックから影響を受けたメロディラインは健在だが、ほぼ一人で製作したこともあり、サウンドはエレクトロニカやクラウトロック色が強くRIDEとは一味違うサイケデリアを生み出している。個人的にはBECKにも通じる自由奔放さを感じた。昨年のRIDEの新作でも思ったが、50歳とは思えない程感覚が若い!
●No.27 ファルセット/RYUTist
新潟の古町をベースに活動するアイドルグループの4作目。シングルリリースした楽曲をアルバムに組み込んだ初の作品となった。楽曲提供は沖井礼二・北川勝利といったポップマエストロから、シンリズム・Kan Sano・柴田聡子・Ikkubaruといった新進アーティストまで豪華な顔ぶれで正にポップミュージックの玉手箱。特に蓮沼執太によるALIVEは新機軸で出色の出来。これらの楽曲を彩る4人の自然なハーモニーは不変で至高。
●No.26 20/20/Knuckle Puck
現行ポップパンクシーン最注目株による3作目。オルタナ色の強いアグレッシブなサウンドとメランコリックでキャッチ-なメロディが持ち味だったが、今作はよりポップさを追求し00年代ポップパンク~ギターポップ的なアプローチに。NFGの王道ポップパンク回帰に呼応したような突き抜けた爽快さ、Third Eye Blindを彷彿とさせるギターアプローチは、このサウンドが青春だった自分のような世代には堪らない。
●No.25 Gold/FAREWLL,My L.u.v
名古屋をベースに活動するSoul~R&B~HIP HOPアイドルの新作。児玉律子とサポートメンバーのタイロン・ウッズの2名体制での作品となった。1曲目からサポートメンバーをメインに据えるという掟破りのダンスチューンHappy Lightに始まり、極上浮遊レゲエチューン染まっていく、ミニマルでジャジーで90’Sなトラックが刺激的なObsessionなどバラエティ豊かな楽曲が並び、児玉律子のボーカリストとしてのポテンシャルを存分に味わえる。
●No.24 No Driver/I Love Your Lifistyle
スウェーデンのエモ~メロディックバンドの3作目。前作の路線を継承した持ち味のキャッチ-でパンキッシュなサウンドに加え、シンセも多様しより広義のギターポップファンの心を掴む作品に。全曲シンガロング必至の捨て曲無し。母国語で歌う曲があるのも良いし、ミディアムテンポの楽曲が特に沁みる。そして、特筆すべきはジャケットが可愛い。
●No.23 Blue Hearts/Bob Mould
Husker Du~Sugar~ソロと活動してきたハードコアパンク~オルタナの大重鎮のソロ14作目。コロナ禍~BLM~大統領選に端を発したアメリカの混乱に対する怒りをストレートにぶつけた原点回帰作品。パンクロックと政治は切り離せないものであるけど、この作品に説得力をもたらしているのは綴られた言葉ではなく、演奏とボブの絶唱から感じる『音に込められた怒り』、そしてどれだけアグレッシブになっても損なわれないメロディセンスだろう。
●No.22 Red Eye/Randy Goodrum
アメリカのAOR界を代表する(自分はこのアルバムで初めて存在を知ったのだけど)SSWの26年ぶりの新作。タワレコで何の気なしに試聴して、再生した一音目からこれは絶対間違いないやつだとわかり即購入。全楽器パート・メロディ・歌・コーラスの調和が心地よすぎる。王道かつモダンなアレンジを盛り込んだThe Hubが特にお気に入り。
●No.21 THE PARK/赤い公園
個人的世界で一番好きな女性ボーカリストの1人である石野理子(exアイドルネッサンス)が新ボーカルとして加入後初のフルアルバム。一聴して赤い公園とわかるサウンドやメロディを核に残しつつ、石野の歌声を100%活かせる楽曲にシフトさせた津野米咲の才能と力量に感服。直近で発表されたシングルも傑作で今後のさらなる飛躍を期待していただけに、津野の急逝がただただ残念。
●No.20 Compartidas/Asi
Gonza Sanchezを中心としたアルゼンチンのバンドの3枚目のアルバム。元々はドリーミーなインディロックだったが、前作(国内版はこのアルバムとの2in1)からAOR/ジャズのテイストが盛り込まれ、今作はその志向をより強めた作品となった。女性ボーカルをフィーチャーした楽曲が増え、Chassolからの影響も感じられる意欲作となった。心地よい浮遊感に包まれてチルアウトできる。
●No.19 Punisher/Phobe Bridgers
LA出身の新進SSWの2作目。今年はThe 1975とのコラボレーションでも注目を浴びた。ローファイなフォーク~ギターポップからブラス隊をフィーチャーし聖歌的なバックコーラスまであるラスト曲まで、USインディ的サウンドとメジャー志向の大物感を嫌味なく同居させる手腕が見事。何より声とメロディが良いのと、女性SSWにありがちなメンヘラ感があまりなくてカラっとしてるのも好き(個人の感想です)。
●No.18 First Star/Jewel☆Ciel
Arc Jewel所属のアイドルグループ初のフルアルバム。アイドルらしい夏感とノスタルジアのあるキラキラした楽曲をメインとしつつも、芯のあるバンドサウンドが全体をグッと引き締めて、派手過ぎず地味過ぎずの絶妙なバランス。個人的に「アイドル楽曲で評価すべきは玄人受けするジャンルに特化しているかではなく、多彩なジャンルをいかにポップミュージックとして昇華できているかではないか?」という認識を持つきっかけになった。楽曲提供者の1人でサウンドプロデューサーの平田博信(Swinging Popsicle)が以前関わっていたAurolanoteのカバーが秀逸。
●No.17 Gulfer/Gulfer
カナダ出身のエモリバイバルバンドの2年ぶりの新作。前作Dog Blessはザ・トゥインクルエモという感じのツインギターがタッピング地獄で畳み掛ける強烈かつ勢いのある作品で、個人的にも2018年ベストの1枚に挙げていた。今作はイントロを挟んだ2曲目こそ前作を彷彿とさせるが、全体的に鬼のタッピングは要所に留める感じでグッと聴かせる正統派にシフトしている。結果的にバンドのソングライティングの良さが浮かび上がる好作となった。例えるならGulfer版endserenadingか?
●No.16 蕾/Climb The Mind
名古屋のマス~エモスリーピース3年ぶりの新作。よりスローでメロディアスに、フォークソングを彷彿とさせるまで歌心が深化。持ち味である飄々とした歌詞も物語性が強まり、『出会いと別れ』を感じさせる内容となった。一方でリード楽器と言っていいような独特のベースライン、エモーショナルにバーストするギターは健在で、メロディを一層引き立たせている。インディ・エモ好きのみならず、もっと認知が上がって良いバンド。
●No.15 Notes On A Conditional Form/The 1975
前作でUKのみならず世界的ロックバンドにのし上がった4人組の前作から短いスパンで発表された4作目。CD1枚で22曲トータル80分というボリューム、スムーズには進まない曲構成と、正直アルバムとしての評価に若干困る作品となった。一方でMe & You Together Songを始めとした先行シングル群の圧倒的なキャッチ-さはキャリア中堅バンドとは思えない瑞々しさに満ちている。個人的にはサブスク主流となりアルバムの存在価値が問われる昨今の音楽の聴かれ方への皮肉かつ挑戦状と解釈したが…
●No.14 Forever + Ever X Infinity/New Found Glory
00年代ポップパンクの代表格の10作目。ルーツであるHCパンクの前のめり感を取り戻しつつ、持ち味のドキャッチ-なメロディセンスも全開にした傑作。ロックバンドがトレンドで無い今だからこその原点回帰。今年のパンクシーンを象徴する一枚となった印象。余計な説明は不要、あの頃キッズだった皆聴くべし。
●No.13 Never Not Together/Nada Surf
USインディ・グランジ・オルタナシーンの荒波を生き抜いてきたベテランバンドの9作目。キャリアの中で研ぎ澄まされていったメロディセンス、普遍性、純度の高いギターポップ集。初期代表曲Popularを彷彿とさせるスポークンスタイルでまくしたてるSomethig I Should Doは圧巻。
●No.12 Suddenly/Caribou
Dan Snaithによるソロプロジェクト6年ぶりの新作。夢見心地なエレクトロサウンドと歌心のあるメロディは健在。今作は大胆なサンプリングのR&B~ヒップホップ的なアプローチやフォークトロニカ要素も盛り込みバラエティ豊かで緩急があるのにしっかり一貫性のある作品となっている。HOMEは今年のベストトラックの1つ。
●No.11 Clouds In The Mirror (This Is Not A Safe Place reimagined by Pêtr Aleksänder)/Ride
昨年に発表したThis Is Not A Safe Placeを Pêtr Aleksänderがストリングスアレンジでリミックスしたアルバム。元々再結成後のRIDEはエレクトロニカに積極的に接近していただけあって、繊細なメロディライン・コーラスワークがポストクラシカルなサウンドが違和感なくマッチしている。RIDEというバイアス抜きにしても純粋に美しい作品。
●No.10 Ohms/Deftones
ハードコア・メタル両界隈から支持される稀有な重鎮(物理的にも)バンドの4年ぶりの新作。前作GOREは若干煮え切らない内容だったが、今作はチノのボーカル、ヘヴィに浮遊するギター、アンビエントなエレクトロサウンド、どれを取ってもいい具合に振り切れている。所謂キラーチューン的な楽曲は無いがアルバムトータルで隙が無い。サバスばりのクラシカルなフレーズから激重展開に雪崩れ込むラスト表題曲で一気に全体の流れが集束していく感じは圧巻。
●No.9 PINK/RAY
匿名シューゲイザーアイドルとして話題になった………(以下ドッツ)の運営が手掛ける4人組アイドルの初のフルアルバム。ドッツ時代の楽曲も一部引継ぎ、Ringo Deathstarによる提供曲Meteorなどシューゲ~エレクトロ路線を継承しつつ、新機軸としてパンク・ポストハードコア色が強まった作品に。これらの雑多なジャンルを内包しつつも核となるのはキラキラとしたメロディラインと4人の歌声。マニアをニヤリとさせる音楽性を維持しつつも、しっかりアイドルポップスとして成立する楽曲たち。この魅力を否定しろというのはなかなか難しい。
●No.8 Printer's Devil/Ratboys
シカゴを拠点に活動する男女エモ~オルタナデュオの3作目。今作から4ピースのバンド編成になった影響か、ぐっと歪んだギターが前面に出たアグレッシブな作風に。これにJulia嬢の甘い歌声が乗っかるのだから堪らない。that dogやSarge、P.S.Eliotなどの90'sオルタナの系譜を引くギターポップ好きは必聴の一枚。
●No.7 Corpo Possivel/Bruna Mendez
アフロだし名前似てるけどブルーノ・メンデス(セ●ッソ大阪)ではありません。ブラジル出身の若手女性SSWの2作目。エレクトロでチルなサウンドに乗せてポルトガル語で歌われるR&B。サウンドと語感の相乗効果で独特な心地よい浮遊感が産まれ、トレンドの音でありながら圧倒的に個性的。やはり南米大陸は才能の宝庫である。
●No.6 Somewhre City/Origami Angel
ワシントンをベースに活動する2人組エモリバイバル。昨年11月のリリースだけど、存在を知ったのも聴きまくったのも今年だし今年のベストに入れさせて下さい。所謂トゥインクルエモ的な楽曲もあるものの、そこに留まらない個性的でテクニカルなギターアプローチ(特にクリーントーンのカッティングがイカす)がカッコいい。NFGばりの爽快なポップパンク・STDのような切ないメロディにエモリバイバルのシンガロングな衝動性が合わさったら最強でしかないでしょう。
●No.5 Figure/Into It. Over It.
数多くのバンド・プロジェクトで活動してきた現行エモの最重要人物の1人、Evan Weissの本業とも言えるiioiの4作目。前作Standardsはパンキッシュな要素が減退しポストロック的なアプローチで聴かせるアルバムだったが、今作はより広義のギターロックに接近している。と言ってもメジャーな大作志向というわけでもなく、いい具合に力みの無いバンドアンサンブルとグッドメロディは個人的にはNarrow Stairsの頃のDCFCを彷彿とさせる。Evanの才能底知れず。
●No.4 Inlet/Hum
95年に早すぎたポストオルタナな1枚You'd Prefer an Astronautを発表し、後発世代に多大な影響を与えたバンドが22年ぶりの新作を突如発表。基本的なスタンスは変えず、そのヘヴィさはさらに凶悪に、ブランクを感じさせないどころか時代がようやくHumに追いついたことを証明するような1枚となった。奇しくもShiner、Deftones、JESUなどジャンルの壁を超えてヘヴィな音を鳴らすバンドが直近で新作を発表し、この流れを象徴するようなオリジネイターの帰還だった。
●No.3 16歳のアリス/川上きらら
うさぎのみみっくのメンバーとしても活動する福岡出身の16歳(現在は17歳)のソロ名義で初のフルアルバム。初期松田聖子を彷彿とさせる古き良き正統派アイドルポップスを現代に成立させるのは、彼女の歌声・と歌唱法(特にしゃくりが素晴らしい)あってこそ。更に80年代後半~90年代前半J-POP的なアプローチもあり、飽きさせない。音楽がライトに消費させる時代だからこそ作りこんだよい曲・アレンジ・歌が満載の作品が世に出たことは意味があると思う。グループ活動含めて今後に更に期待。
●No.2 Women in Music Pt. III/HAIM
正直彼女達の過去作はあまりちゃんと聴いていなくて、『ブラックミュージックや80’sを消化したお洒落な音楽をやる今時のバンド』という印象だった。ある日たまたまレコード屋でかかっていたのがこの『Women in Music Pt. III』、レイドバックした泥臭いアコースティックナンバーが耳に残った。今作は前述したイメージ通りのスタイリッシュさもありながら、そこにアメリカーナなテイストが違和感なく溶け込んでいる。ジュディ・シルをポール・サイモンがアレンジしたようなLeaning On Youは今年のベストトラックの1つ。
●No.1 Every Sun,Every Moon/I'm Glad It's You
カリフォルニアのエモバンドの2作目。前作はThe Promise Ringフォロアーとも言える正統派なメロディックエモだった(なお今作を買った後に聴いた)が、今作は御大J・ロビンスをプロデューサーに迎え、エモの枠を取っ払ったギターポップとも言える爽快感とスケール感のある作品に。ピアノやキラキラシンセも多様しつつ、時に軽快に時にエモバンドらしくハードにドライブするギターサウンドが心地良い。そして、3-4枚目あたりのSaves The Dayや初期Copelandを彷彿とさせる切ないメロディラインの素晴らしさ。00年代前後に出てきたらメインストリームでヒットも狙えたのではとすら思える。エモを、洋楽を普段聴かない人でも刺さる人がいるであろう、そんな普遍性のある大傑作。
そんな感じで、今年は嗜好がパンク・エモ寄りになったのが顕著に出た結果になりました。アイドルに関しても所謂楽曲派的なものより純粋に曲が良いものが刺さるようになってきたかも。そんな2020年でしたな。
sora tob sakanaと私⑤メンバー編(完)
本当はふぅちゃんの誕生日に間に合わせるつもりでしたが、下書きがぶっ飛んだり、書き直したりしてたら9月の終わりとなりました…
今回はサカナのメンバーへの想いを語って締めくくりとしたいと思います。
※注※れいまなつかに関しては客観的、ふぅちゃんに関しては超主観的文章となっています※注※
●風間玲マライカ
『心優しき自由人』
サカナ現場に通うようになって持った印象は、
・思ったことをすぐ言動に出す子
・歌声に癖が無く綺麗
・上昇志向(「売れたい」連呼w)
あたりだろうか?
初対面だろうと知ってるオタクだろうととにかくフランク、メンバーに対しても遠慮なくものを言うし、キツい性格の子なのかなと思った。
でもしばらくして見えてきたのは、根が優しくて機転の利く側面だった。
それを象徴する出来事が16年10月の定期公演。オケが止まってしまった時に、「時間が止まったのに私たちだけ動いている!」とアドリブを入れたり、オケトラブルが原因で思うようなパフォーマンスが出来なかったと泣き出すふぅちゃんに「しっかりして!いつも全力なんでしょ?」と声をかける姿、とても頼もしかった。対外的なイベントやTV/ラジオなどでもれいちゃんの存在が、サカナの弱点である「トーク」「バラエティ感」を補っていた感はある。(3人になってからのユルさも楽しかったけど)
また、自身の生誕祭でも常に『ファンが見たいと思うもの』を考え、それを優先して企画に入れて(レア曲やラップ曲、オサカナ楽団、サインボールなど)、とてもファン思いな一面もあった。それはラストの卒業公演まで徹底されていたし、アイドル生誕祭で定番のソローコーナーを卒業の日に初めてやったことにれいちゃんがどれだけ『皆で楽しむ』ことを最優先していたかが顕れていると思う。
卒業して1年以上経っても、芸能活動に拘らず今やりたいことをマイペースにやっているのもれいちゃんらしい。これからも人生楽しんで。
●山崎愛
『永遠の未完の大器』
自分がサカナを知った頃(15年末)、唯一途中から加入して最年少だったまなちゃんは先輩メンバーに敬語を使っていた。ブログもとてもアイドルらしい内容(今見るとかなりシュールw)で、
・真面目で健気
・儚げで思春期感のある歌声
・繊細で人見知り
こんな第一印象だった。
敬語を使わなくなったのが16年の夏あたりだっただろうか?そこからどんどんと変人の片鱗wを見せ始めるとともに、メンバーへの不器用な愛情を全開にしていった。解散直前に「サカナに入って良かったことは?」という質問に「友達(メンバー)ができたこと」と答えたように、メンバーと一緒にいることが誰よりも好きだったと思う。
そして「サカナの成長は山崎愛の成長の歴史である」と言っても過言ではないくらいパフォーマンス面の成長が著しかった。彼女の持ち味である儚げで柔らかい声質を損なうことなく、太さと力強さも加わった18年以降の歌唱は見事だった。そして、その声の柔らかさはハモにも最適だった。余談だが、まなちゃんが夏の扉でハモを入れるようになった時に全握で褒めたら「え?やったー!」ととても喜んでくれたことが私とまなちゃんの数少ないいい思い出であるw
このままアイドルを続けていたらどんな成長を見せてくれたのだろうか?行動思考の読めない子だけに、しれっとどこかで復活しないだろうかと密かに期待もしている。
●寺口夏花
『ゆるキャラの仮面に隠した信念』
なっちゃんの第一印象は、
・最年長なのに一番背が低くて言動も子供っぽい
・独特なアニメ声
・意外と毒舌
みたいな感じで、16年3月の初めて行ったふらぷろ祭でもシャムの野呂さんとゆるゆるなMCを担当していたのをよく覚えている。
恐らくなっちゃんは元々ダンスや歌が得意なタイプでは無かったと思う。特にリズム感を必要とされる楽曲で相当苦労をしたのではないだろうか。それでも大舞台やいざというときに一番パフォーマンスが頼もしく見えたのは寺口夏花だったし、きっと陰で血のにじむような努力をしてきたはず。その努力を表に出すことを嫌がり、ゆるいキャラで隠していたのではないかと勝手に思っている。
思えば、4人時代のMCやトークで自然とまとめ役になっていたのはなっちゃんだったし、「みんな仲良しくして!」「ズルはダメ」「人が話してるときに後ろ向かない!」などの発言も本気だったのだろう。その責任感・正義感の強さを象徴するエピソードを1つ。
16年6月のれいちゃん生誕祭。前述した通りレア曲中心(+オサカナ楽団、撮影可能曲などの企画)のライブで、ソロコーナーも無かったことからいつも通りの感じでライブが盛り上がっていた。その時、ライブの合間のMCでなっちゃんが発した一言、
「ねえ、れいの生誕なのに白以外のサイリウム焚くのあり得なくない?」
れいちゃんの性格的にそこまで気にしていなかったかもしれない。それでもなっちゃんは、少しでもれいちゃんの生誕祭らしくしたかったのだろう。当然、赤いサイリウムも見えていただろうに、はっきりと発言する姿がとてもカッコよかった。
彼女がアイドル活動に区切りを付けたくなったのは、そんな根の真面目さ、正義感の強さゆえにという部分は少なからずあったかもしれない…けどそこを詮索するのは野暮だろう。そんななっちゃんが好きだったし、幸せに平和に健康に怪我無く過ごして欲しい。
●神﨑風花
『天使』
150枚(多分)、ふぅちゃんと撮った(ツーショット)チェキの枚数である。
サカナのオタクとしての5年間は間違いなく、『ふぅちゃんとの歴史』だったし、ふぅちゃんとのチェキ(通称:ふぅチェキ)を見返すだけで色々な思い出が蘇ってくる。自分のオタクスタイル(1グループ=1推し、生誕以外は推しと撮らない、ループしない、「推してる」と口に出さない)は完全にふぅちゃんを推す中で確立されたものである。
そんなふぅちゃんの第一印象は、
・ボブ
・子供っぽい
・元気
と普通の中学生だなーという感じで、一発で惹かれたわけではなかった。
初ふぅチェキを撮ったのは2度目にサカナを観た時、忘れもしない2015年12月27日(余談ではあるがハ●ムスの元阿部さんと初チェキを撮った日でもあるw)、TFMホールの対バンだった。座りで高くて広いステージでじっくり観れたこともあって、ふぅちゃんの表情の豊かさがやたら印象に残った。
「何この子、ライブ中ずっと表情コロコロ変えてるやん」
ただ笑顔をキープするのではなく、変顔に近いレベルまで曲や歌詞に合わせてコロコロ変わる。ついつい目で追ってしまった。
当時、主現場だったアイドルネッサンスの特典会はお見送り会がメイン、チェキを撮れるのは生誕祭のみだったので、「チェキはおめでたい日に撮る特別なものでむやみやたらに撮るものではない」という感覚だった。なので今では信じがたいことだけど、相当な覚悟を決めてチェキを撮りに行ったと思う。
何を話したかは緊張しすぎて覚えていない。でも、明るくてフレンドリーでめちゃめちゃいい子だと思ったのは覚えている。それからサカナ現場行った時は必ず、ふぅちゃんとチェキを撮るようになった。ふぅちゃんからどんどん話をしてくれるし、気を張らなくてもアイドルと楽しく話せるということが少しずつ楽しくなっていた。
そして、2016年の5月7日にふぅ推しになる決定的な出来事が起きる。その年のGW、ふぅちゃんは体調不良でライブをしばらくお休みしていた。そしてGW最終日の7日から復帰する告知があり、いてもたってもいられず急遽秋葉原のバクステに向かった。そこでの特典会、自分の顔を見たふぅちゃんが「ウシロさーん!」と満面の笑みで声をかけてくれた。それまでアイドルに名前を覚えてもらう必要性を感じていなかった自分が初めてアイドルから認知された瞬間、恐らく死ぬ時の走馬灯に確実に流れるだろうw
それからはもう夢中だった。みるみるサカナ現場は増えていったし、ライブ中にコールしたりケチャしたり行動で示せば、ふぅちゃんはしっかり爆レスで応えてくれた(それを会場にいる沢山の人にやってたのだから本当にすごい子だと思う)。当時からふぅちゃんには強い古参オタクの方々がたくさんいたので、かえって他人と比べるプレッシャーも無くマイペースで1現場で1チェキを守ることもできた。
一方でふぅちゃんはMCやトークイベントではあまり積極的に話すタイプでは無かった。後、結構泣き虫。現場が増えるにつれ、この子は根は大人しいタイプなんだということもなんとなくわかってきた。だからこそ、歌もダンスもアイドルとしての自分のあり方も、努力をして試行錯誤して絶えず向上させていったんだと思う。その象徴の一つが毎日続けた『ふぅカルタ』『ふぅ格言』だろう。(まなちゃんのブログもそうだけど、サカナメンはやると決めたら意固地な子が多い)
そんなふぅちゃんも高校生になり、年齢を重ねるにつれ落ち着きのある美少女に成長していった。ライブ中の百面相は歌詞の世界観を意識した繊細な表情に、満面の笑みはアルカイックスマイルに、歌唱は自分の声質を100%活かせるような自然なスタイルに、ダンスも指先・つま先まで意識された華麗さを身に着け、『天使のような』から『天使』に変身していった。
そんな変化も含めて全部魅力的だったし、どんな時もいつも自然なふぅちゃんだったから自分もペースを崩さずに5年間推し切れたのだと思う。
これを書き終わる2日前の9月28日にふぅちゃんは19歳の誕生日を迎えた。これからどんな大人になるのだろうかとか、どんな道に進むのだろうかとか気になることはたくさんあるけど、今は楽しい5年間を過ごせたことへの感謝しかない。ふぅちゃん、君のおかげでオタクとして色々踏み外した気がするけど、最高に楽しかったよ。本当にありがとう。できればまたいつかどこかで。
●あとがき
まさかこんなに時間がかかり、かつ長々と書くことになるとは思いもせず・・・でも思い出を整理して吐き出せたので、12月にラストライブの映像が届くころにはちゃんと受け止めて見直すことができるような気がします。
サカナに、ふぅちゃんに出会わなければ、ふらぷろの後輩たちにも、さまざまなアイドルにも出会わずKSDDにもなってなかった気がします。そんな意味でも人生を変えてくれたグループ。後にも先にも唯一のグループだと思ってます。
いつか、近い将来にサカナの音楽がもっと正当な評価を得たらいいなと願いつつ、このブログを締めたいと思います。(恐らくもう更新することはないでしょうw)
sora tob sakanaと私④ライブ編
さて、今回はsora tob sakanaのライブについて語ります。
Wikipedeiaのライブ記録(これ作った人に感謝)見ると本当凄い数のライブこなしてるのに驚きます。
今日は自分が行ったライブの中で特に思い出深いものについて、題して
~マイベストサカナ現場10選~
※ランキングではなく基本時系列です
■sora tob sakana突発イベント~月面の遊覧船番外編~(2016.02.07 TSUTAYA O-nest)
開催1週間前くらいにTwitterで「アイドルでもバンドでも対バン相手募集します」みたいな告知で急きょ開催されたライブ、共演は変態段ボール工作系ハードコアEmliy Likes Tennis、レーベルメイトで親交の深いむすびズム、更にフィロソフィーのダンスとの初共演でもあったり。
形態・ジャンル・知名度問わずのごった煮対バンは後の天体の音楽会の原型?個人的にもアイドルってここまで自由にやっていいんだと知ったイベントで、夏の扉をライブで初めて聴けた日なので思い入れあったり。舞台裏でなっちゃんが初対面の日向ハルさんに「身長何センチですか?」といきなり聞いて、自分より低いことを知ると勝ち誇って去っていった事件が勃発w。両グループが年齢差を越えた盟友関係となっていくきっかけとなった意味でも重要な日。
■タメドラフェス!♯002(2016.6.26 TSUTAYA O-nest)
ラジオ主催のなんてことない対バン・・・なのだけど、実はこの前週にTIFのメインステージ争奪ライブ(自分はチケット落選して配信で観ていた)がありサカナは同率最下位で敗退していたのでした。争奪ライブ直前にふぅちゃんと話した時は「勝っても負けても、こういうイベントに出してもらえるだけでも有り難いよね」なんてことを言っていたのを覚えている。
そして敗退翌週のライブ、持ち時間20分の短いステージだったけどサカナはびっくりするほど気持ちの入ったキレのあるパフォーマンスを見せた。ライブ後の特典会、ふぅちゃんに先週の健闘を労うと「やっぱり悔しかったよね」とポロッと一言。その時初めて気づいた、ぱっと見のほほんとしてるこの子達実は負けず嫌いで結構ガッツあるやん!と。本当にサカナの虜になったのはこの日だった気がする。
■sora tob sakana 2周年記念ワンマンライブ「境界線上のサカナ」(2016.7.23 渋谷WWW)
自分にとって初めてのサカナワンマン。吉田豪とのトークショー、1stアルバムのフラゲ、伝説のKIDSTシャツの発売と盛りだくさんだった。もちろん本編は今までの集大成ともいえる素晴らしいパフォーマンス・演出で、クライマックスで夏の扉は未だに目に焼き付いている。
アンコールの挨拶で感極まって涙するふぅちゃん、クラウチングスタートが始まっても涙は止まらない。そんなふぅちゃんを後押しするように沸き起こるふぅちゃんコール!泣いてないのに自分にもコールを寄こせと催促するれいちゃんwサカナ現場って基本思い思いに楽しめるのが良さだと思ってるけど、あの時は一体感を感じたなあ。
■TOKYO IDOL FESTIVAL 2016 SKY STAGE(2016.08.06)&2019 SKY STAGE(2019.08.04)
前述したメインステージ争奪ライブには敗れたものの、16年にサカナは初のTIFに出演することとなる。その2日目、メインステージ・SMILE GARDENと並んで人気のSKY STAGEでサカナは夕暮れの天然のVJをバックに衝撃的なパフォーマンスを見せた。
翌年にはメインステージ出演を果たし様々なステージでインパクトを残してきたが、あの日の広告の街は間違いなくサカナの躍進のきっかけの一つになったと思う。
その後17年・18年のSKY STAGEは日中の時間帯でそれもまた良いパフォーマンスだったのだけど、結果的に最後のTIFとなった19年の最終日。ラスト3組がヤなミュー➨サカナ➨amiinAと楽曲派シーンでしのぎを削った好敵手3組の流れ、そして極めつけはトリにサカナと盟友amiinAのコラボ。夜空に舞い降りた純白の5人のパフォーマンスは19年のアイドルフェストータルでベストアクトだった。
■sora tob sakana 単独公演「月面の音楽隊」(2017.04.30 恵比寿LIQUIDROOM)
サカナにとって初めてのフルバンドセットでのワンマンライブ、当時サカナにとって最大キャパのリキッドルームをソールドアウトさせたことでも話題になった。
バンドメンバーは、照井順政(ハイスイノナサ/siraph)佐藤香(Aureole)、森谷一貴(ハイスイノナサ)、松下マサナオ(Yasei Collective)、中西道彦(Yasei Collective)、オータケコーハン(from LAGITAGIDA/sajjanu/あらかじめ決められた恋人たちへ)、小西遼(CRCK/LCKS)と、18年以降固定となったラインナップとは大きく異なり、様々なジャンルから豪華なプレイヤーが集まっている。
かなり癖の強いグルーブを生むバンド演奏に負けずに、楽しそうに軽やかにパフォーマンスするメンバー。非日常性を楽しめるメンバーが揃ったことは大きな武器だったと思う。個人的には、このライブからポール・マッカートニーのドーム公演を回したこともあり恐ろしく濃い一日であった。
■アイドル横丁夏まつり!!〜2017〜 一番地(2017.07.09 横浜赤レンガパーク)
アイドル横丁自体フジヤマプロジェクトが噛んでいることもあって、サカナは前年からメインの一番地に出演できていたのだけど、その年の2日目は17時前後の夕暮れ時の出演で名実ともに人気実力で掴んだメインだった。しかし、サカナの次はAKB・・・AKBオタクで埋め尽くされた一番地、完全にアウェイな状況で魅せたパフォーマンス。そしてラスト、夜間飛行の余韻から放たれたribbonの神々しさは素晴らしかった。サカナは逆境や大舞台、実力のある対バン相手ほど強いし燃える。
■アイドルネッサンス主催ツーマンライブ「対するネッサンス!!2017」(2017.10.08 渋谷WWWX)
確か新木場のアイドル甲子園かなんかでルネの出番の時にサカナメンが乱入してきて(逆だったかも?)、ルネ主催のツーマンにサカナが出演することが発表された。両方のオタクだった俺は大歓喜である。
王道+鋭角やtswなどの攻めセットで挑んだサカナに対して、ルネはハーモニー重視のシックなセットで迎え撃った記憶。サカナの魅力の1つって、バラバラの声質を持った4人が地声でユニゾンで歌うから生まれる自然のハーモニーだと思っていて、ルネはそれに対して組織化されたハーモニーを魅せつけたと勝手に思っています。
それにしても、まなつかの金曜日のおはようや、ふぅれいの太陽と心臓、そしてまなちゃんの「待ってるにゃあ」が見れたのは一生の思い出・・・w
後にこよちゃんが開花でレーベルメイトになったり、ふぅちゃんとずーちゃんがソロ共演したり、なっちゃんとまいなが友達になったり、サカナとルネはその後の縁も面白い。
■sora tob sakana presents 「天体の音楽会」(2018.02.12 中野サンプラザ/2019.02.17 Zepp Tokyo/2020.02.08 TSUTAYA O-EAST、O-WEST、duo MUSIC EXCHANGE)
2018年から毎年2月に開催された天体の音楽界、アイドル・バンド問わず尖ったラインナップで、私みたいな音楽ジャンキーでKSDDな人には天国のようなイベントでした。(逆にそうでない人には苦痛だったとは思う・・)
大ブレイク前のKing Gnuを近くで観れたり、tricotやTempalay、MONO NO AWAREみたいな注目の国産バンドをたくさん観れたのも邦フェス行かない自分にとっては貴重だった。
何よりサカナのバンドセットが回を経るごとに研ぎ澄まされていくのが楽しみだった。所謂ホールで見るのとは違う解放感。それは今年のvol.3のo-eastのステージが究極だったと思うし、スタンディングライブのサカナは思えばあの日が完成形だった。サカナのオタクも、そうじゃない人もみんな楽しそうだったよなあ、あのLighthouse。
■Pop'n Party(2019.05.05 Shibuya duo MUSIC EXCHANGE)&風間玲マライカ卒業公演(2019.05.06 白金高輪SELENE b2)
玲ちゃんにとって最後の対バンと卒業公演。前者はサプライズでフィロのスとの合体ユニット『踊るオサカナ』が復活し、両者の強い絆に感動した。その日のライブはフロアの吹っ切れた盛り上がりもやばくて、死ぬほど踊ってた記憶。
そして翌日の卒業公演は一切涙の無い、玲ちゃんらしいサービスと笑顔満点のライブだった。思えばふぅれい・まなつかのラップもあの日がラスト。今まで生誕祭でも『みんなで楽しむ』ことを優先して一切ソロをやらなかったれいちゃんのアコースティックソロは神々しかった。
■sora tob sakana last oneman live「untie」(2020.09.06 日本青年館ホール)
このライブについては、まだ自分の中で消化し切れてないし、アーカイブも見ていない。年末にBDが届くころには色々気持ちの整理が付いているとよいのだけど。
とにかく言えるのは、唯只管美しいライブだった。これほど美しいアイドルの最期を観たことはなかった。
これ以外にもワンマンライブや昨年の@JAMとか語りたいものがたくさんありますが、バランス取りました。そして、今回もめちゃめちゃ時間かかりました!(過去のライブ記録、自分のSNS等で事実確認するのがえらい大変だった)
次回からは最終章メンバーについて語って(多分2回に分けます)、締めたいと思います。
sora tob sakanaと私③楽曲:ワーナー期編
さあ、懲りずに続けます。
※重ねて言いますが、あくまで個人の感想・音楽趣味・知識に基づいたものなので、照井さん本人の意図・見解とは大幅にずれていることをご了承ください
■alight ep(2018.05.16)
①Lightpool
個人的『カッコいいサカナ部門第一位』。中野サンプラザで開催された天体の音楽界vol.1で初披露。メジャーデビューが発表されても淡々としたまなちゃんから、「それでは7月に発売されるメジャーデビューミニアルバムから聞いてください。Lightpool」でこの曲に雪崩れ込んだ時のインパクトは凄かった。一瞬のドラムロールからイントロ抜きで歌が始まる構成はセトリのどこに置いても不意打ち感があって、テンションが上がる。サカナの振り付けはどちらかと言うと世界観の表現に主軸位を置くことが多いが、この曲に関しては最高にキレキレでカッコいいダンスを観ることができる。メジャー感溢れるスタイリッシュなMVも最高。シングルとしてSFアクション系アニメのOPタイアップとか取れてたら、サカナの代表曲になっていたかもという妄想。
②鋭角な日常
マスロック×南米サイケデリア。初披露時は賛否両論だった印象だが、振り付け・VJ含めたライブパフォーマンスの強度で徐々に評価を上げていった。個人的には照井さんが南米音楽にも精通しているのは知っていたし、ポストロック×南米×ビブラフォンってDylan Groupやん!と興奮してすんなりハマった。本来はフロアを横移動させることも狙った振り付けだったのだろうけど、そこは不発に終わった。アウトロでクールに「ありがとう」と言う時期があったけど、あれ好きだった。ブリッジのふぅちゃんパートはまじサウダーデ。
③秘密
サカナのオタクが思う『サカナらしい曲』を『可愛くてキャッチ-』に全振りしたような曲。あざとい、こんなあざといの好きに決まってる。この曲は天体の音楽会vol.1以降歌詞・振り付けが大幅に変更され、アルバムにはそのバージョンが収録されている。旧バージョンの振り付けがシュール可愛い感じで結構好きだった。ラスサビでおさえつけてた気持ちが駆け出して(マサイして)しまうオタクが続出する。
④Brand New Blue
照井さん作曲で唯一外部がアレンジした楽曲。元はGalileo Galileiを彷彿とさせる爽やかなギターポップで、振り付けも大幅に違っていた(こちらのサビの振り付けがとても可愛い)。本作収録verではホーンセクションやシンセが前面に出た良くも悪くも煌びやかなJ-POP的なアレンジに変わっており、新鮮味はあるものの音源でもライブでもどうしても浮いてしまった印象。バンドセットでは元アレンジと本アレンジの折衷のような形になり、Deep Blueでもそのアレンジが採用されている。魔法~・tswに続いて全てメンバーのソロパートで構成されており、まなちゃんの歌唱力の成長著しさが印象的。
⑤蜃気楼の国
OWENを彷彿とさせるポストロックを通過したフォーク調の静かで美しい曲。ソロやハモなど、メンバーそれぞれの歌唱に聴きどころが多い。ライブではラストに原曲に無いコーラスパートが入る。ライブ披露された回数は非常に少なかったものの、WFT以降増えた静謐な楽曲(燃えない呪文、BYOG、踊り子たち等)への橋渡し的存在、試金石だったように感じる。
⑥Lighthouse
夜間飛行が一手に担っていたクライマックスの盛り上げ役だけでなく、ライブのオープニングも飾れるスケール感のある正当派ロックチューン。ロキノン系のバンドが披露したら普通にライブアンセムになりそうなスタンダード感は新鮮だった。クライマックスで飛び跳ねるメンバーの様子を見ると、その時のコンディション・テンションがわかるバロメーターでもあった(特にまなちゃんw)。天体の音楽会vol.3での同曲は圧巻。
■New Stranger(2018.07.25)
①New Stranger
初のアニメタイアップにして、2年半ぶりのシングルリリース。MV100万再生を達成し、新規ファンの獲得に大きく貢献した。一方、アニメの世界観に寄せた歌詞・アレンジはキャッチーで振りコピも楽しかったものの、正直全肯定できなかったのは今だから正直に言っておこう。後、セトリに入れすぎて飽きられてしまった感はある。バンドセットのギターがゴリゴリのアレンジ(Deep Blueも同じアレンジ)はめちゃめちゃカッコいい。
②silver
初披露から音源化までかなりかかった楽曲。趣向の違う楽曲派も殺せるサカナ流平熱ファンク。Kindnessあたりのチルファンク系が元ネタ?淡々と歌うメンバーの裏で徐々に熱を帯びていく演奏が最高にカッコいい。
③発見
相当ハイスイノナサに寄せた実験的な楽曲ながら、3人体制になってからギュウ農フェス等重要ライブのセトリに投入され、フロアの空気を変えるのに一役買っていた。この系統の楽曲は毎回VJが圧巻。拍子、歌の入り方が変態すぎてメンバーは常に苦戦していた印象。
■アルファルド(2018.11.23)
所謂『7インチシングルにしか収録されてない隠れ名曲』的存在。夜空~まぶしいの系譜を継ぐ世界観で、19年のふぅ生誕の人気投票でもメンバー予想外のトップ10入り(当時はまだ3人版の振りいれが未完)を果たした。間奏で入るマイク・キンセラみのあるギターフレーズとそこで性急になるドラムが大好き。
■World Fragment Tour(2019.03.13)
①whale song
出囃子part2。曲名はVJのTONTONさんによるOP映像に合わせてと思われる。客席側が一糸乱れぬ変則クラップで出迎える光景はなんか好きだった。
②knock!knock!
シングルが一切収録されなかった2ndアルバムのリードトラック。低音重視のミニマルなトラックに突然のアラビアンなギター、初めて聴いた時はどう反応していいかわからなかったが、徐々にビートの気持ちよさに気付き、気づけば個人的にサカナで一番踊れる曲になっていた。一聴するとバンド向きなイメージは全くないのだけど、バンドセットでやるこの曲は最高にカッコいい。
③FASHION
このアルバムの中で数少ない照井さんぽい手癖のある楽曲。でもサクッと終わる。ライブでやるようになってから良さに気付いた感じ。タイトル通りファッションショーのような振り付けが独特。
④タイムトラベルして
宇宙コンビニ~JYOCHOのタッピングの魔術師ことだいじろー氏による楽曲。今作参加の外部ミュージシャンの中でも一番相性がいいだろうとは思っていたが想像以上。どこか滅びの美学のある世界観はサカナのそれと見事にマッチした。JYOCHOとツーマンライブしてこの曲コラボして欲しかったなあ・・・
⑤燃えない呪文
新鋭SSW君島大空氏による、ローファイチェンバーフォーク。ライブで披露されたのは君島氏とのツーマンとラストライブの2回のみ。『ローファイなオサカナ』という路線はこの先があったらもう少し聴いてみたかったかも。
⑥嘘つき達に暇はない
ジャンルもインスパイア元もはっきりしない人を食った感じ、トラッドっぽい感じもするけど、そんなにフォーク感はない。照井さんの引き出しの底知れなさ。ピノキオを意識したコミカルな振付が可愛く、なっちゃんがアルバムのお気に入りに挙げていた。バンドセットでここまで大化けするとは思わなかった。
⑦暇
アルバムのインタールード的サウンドコラージュ。こういう時のメンバーの悪ふざけはいつも楽しそう。ラストライブでまさかの実演。
⑧ありふれた群青
それこそユーミンなどを彷彿とさせるシティポップ風ナンバー、おやすみの発展系とも言えるが、こういう楽曲を歌いこなせるまでに成長したメンバーの歌唱に注目。特にふぅちゃんの表現力が素晴らしい。
⑨シューティングスター・ランデブー
ex.school food punishmentで現siraphのメンバーである蓮尾氏による楽曲。Negiccoのトリプルワンダーランドを彷彿とさせるようなキュートなデジタルファンクで、これがドハマり。ライブでも頻繁にセトリ入りして、結果的に後期サカナの代表曲の一つにまで成長した感がある。
⑩World Fragment
アルバム表題曲。照井さん的手癖を全開にしつつも、Bメロのchonっぽい展開や、ダブステっぽいアレンジも盛り込んでサカナの新しい代表曲になり得る可能性はあったが、ライブでブラッシュアップさせる時間が足りなかった。
『世界の欠片を集める旅』のタイトル通りバラエティに富んだ実験的な作品だったため、正直1stほどの評価は得れなかった印象だけど、個人的にはこの変化はアリだった。れいちゃん卒業の影響もありこのアルバムを引っさげたツアーが無かったこと、解散直前のアルバム全曲公演にWFTが組まれなかった、このアルバムの世界観をライブで表現する場が一度も無かったのはいまだに残念に思っている。
⑪WALK
長い時間を過ごした仲間との別離と未来での再会を誓うストレートなキラキラギターポップ。結果的にれいちゃんを送り出す曲となり、最後にはサカナのそれぞれの道への背中を押す曲となった。披露回数は極端に少なかったものの、後期サカナの最重要曲。
■ささやかな祝祭(2019.07.24)
①ささやかな祝祭
アニメタイアップ第2弾。3人体制になってから初のシングル。帰り道のワンダーの路線をよりジャジーに表現してアニメの世界観に合わせていったが、結果的にアイドル・アニメどちらのファンにとっても中途半端な曲になってしまった印象。EDテーマというのが尚更難しかったか。黄昏のマティーニ。
②乱反射の季節
スティールパンのフレーズが印象的な疾走チューン。ザクザク刻むギターカッティングが気持ちいい。Fashionと同じく、メジャー期以降のマスロック寄りの曲はサクッと終わるのが良い。これとかパレードとかもっとやりこんでライブで育った姿を見たかった。
③ブルー、イエロー、オレンジ、グリーン
19年のツアーのテーマトラック。アンビエントなトラックに初めてメンバーのポエトリーリーディングを取り入れた実験的な楽曲。それぞれ読み方に個性があって良い。この曲は明確に3人体制だからできることを追及した感じがする。改めて照井さんの詩の世界は独特。
■流星の行方(2019.10.10)
配信ゲームの主題歌タイアップ。全編にわたり壮大なストリングスが流れRPG感が強いが、バンド演奏そのものはかなりアグレッシブでアニのうねるようなベースラインが変態。バンドセットで聴くと、骨組み自体は広告に近い感じがした。
■flash(2019.11.13)
アニメタイアップ第3弾にして逆転満塁ホームラン。1番でアニメOPとしての役割を終えてからの、まるで組曲のような怒涛の展開、最終的にラスサビに最高のカタルシスとともに集束する。照井さんやりたい放題だよ!「神様がまだ~」の寺口パートが素晴らしい、あなたが神様だよ。
②パレードがはじまる
変態リズム地獄最終章。でもサビはきっちりポップ。発見でやったことをポップミュージックとして成立させる意図というか、flashでもそうだけど今まで別々の曲でアプローチしていた要素を1つの曲で複数織り交ぜて表現しようとしている感じ。
③踊り子たち
新居昭乃的退廃感のある変拍子ミディアムバラード。個人的サカナ最高傑作。こういう曲を表現し切れるようになった3人の成長も素晴らしいし、透明な怪物~蜃気楼の国から挑戦してきた表現がここに昇華した大名曲だと思う。
■deep blue(2020.08.05)
①信号
ドローン~エレクトロニカ的サウンドを前面に出しつつ、アンビエントソウル的なトレンドも取り入れた意欲作。普通のグループ、運営だったら夜空を全部パート2的なのを作ってきた可能性もあったかもしれないけど、最後まで3人と照井さんは今のサカナだからできることへの追及を止めなかった。個人的にはflash以降の路線の、アンビエント~エレクトロニカ~ポストクラシカル色の強い3rdアルバムを聴いてみたかった。
②クラウチングスタート
③夜空を全部
④魔法の言葉
⑤広告の街
⑥まぶしい
⑦Brand New Blue
⑧New Stranger
⑨夜間飛行
⑩ribbon
⑪untie
サカナにとってのエピローグ。ピアノとストリングスで構成されたポストクラシカルな伴奏に3人による輪唱が泳ぐ。アルバムジャケットの様に3人が海に帰っていくことを示唆するような歌詞、最後の1節「君が生きている」に全てが込められている感じがする。
■総括
めちゃめちゃ時間かかった・・・これだけの曲をライブで4時間ぶっ通しでやった3人への畏敬の念がさらに増しました。
改めて、サカナの世界観って物理的な意味でも、また精神的な意味でも『別れ』の歌が多くて、当初から全てはいつか来るラストライブのために書かれたんじゃないかと思える曲が多い。未来へのノスタルジーみたいな。
大小の差はあれど、やっぱりサカナの曲がどれも好きだし、これからも聴くごとに色々思い出したり新しい発見したりするのだと思う。次回は思い出に残っているライブのエピソードを書きたいと思います。(続く)